セールスフォース・ドットコム(小出伸一会長兼CEO)とアマゾン ウェブ サービス ジャパン(長崎忠雄社長)は、日本独自の協業を強化する。SaaS、IaaSでそれぞれトップベンダーとして市場を牽引してきた両社が、PaaS領域で連携を深め、クラウドをフルスタックでカバーする「トップ連合」を組む。(本多和幸)
セールスフォース・ドットコムとアマゾン ウェブ サービス ジャパンが10月13日に記者会見を開き明らかにした協業内容は、大きく四つ。まずは、インフラとしてAWSを利用しているSFDCのPaaS「Heroku Enterprise」の営業協力を進める。さらに、両社のエンジニアが力を合わせ、連携ソリューションのリファレンスアーキテクチャを開発するとともに、パートナー、ユーザーの個別支援も行う組織として「クラウドデザインセンター(CDC)」を設置する。それぞれ5人ずつのエンジニアを派遣し、10人規模で活動をスタートする。また、両社のパートナー同士の新たな接点をつくり、連携ソリューションのベストプラクティスを共有することでお互いの顧客基盤拡大を推進するほか、セミナーやトレーニングなど、共同でマーケティング施策も行う計画だ。

御代茂樹
シニアディレクター 両社の協業強化の背景について、セールスフォース・ドットコムの御代茂樹・マーケティング本部プロダクトマーケティイングシニアディレクターは、「IoTなどのニーズが高まり、スピーディで柔軟性に富んだアプリケーション開発が求められるようになった。それを支えるサービスとして、PaaSの重要性が増していることが大きい」と説明する。Heroku EnterpriseはAWSをインフラとして活用しており、AWS Partner Networkに加入し、AWS東京リージョンでの利用も選択できるようになっている。手島主税・常務執行役員アライアンス本部本部長によれば、そうした両社の協業が進むなかで、「大量のIoTデバイスからのデータをAWS上で収集・処理し、それをHerokuに渡して価値のあるデータに加工し、セールスフォースのダッシュボードをフロント側のUIとして活用するようなソリューションが実際に出てきて、非常に大きな手応えを感じている」のだという。こうした“フルスタック”のクラウド活用事例を市場に浸透させていくことで、クラウドの市場そのものが拡大し、両社のビジネスの成長を強く後押しすることになると考えているのだ。

セールスフォース・ドットコムの手島主税常務(左)と
アマゾン ウェブ サービス ジャパンの今野芳弘本部長
アマゾン ウェブ サービス ジャパンの今野芳弘・パートナーアライアンス本部本部長も、「お客様は、クラウドなら現代のビジネスのスピードに後れを取らず、競争力を向上できるITシステムの構築ができると期待しているし、セールスフォース・ドットコムと一緒にビジネスをやっていくことで、その流れを加速できる。ただ、両社製品・サービスをお客様のやりたいことに合うように仕立てていくのは簡単ではない。両社のリソースも投入し、パートナーエコシステムにも連携のノウハウを浸透させて市場をつくっていきたい」と期待を寄せる。今後は、Heroku Enterprise以外の製品についても、具体的な営業協力の可能性を模索していく。