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<Special Interview>日系ITベンダーの中国ビジネス SIer現地トップが振り返る2016年
2016/12/15 20:47
週刊BCN 2016年12月12日vol.1657掲載
今年も残すところあとわずか。この1年間、日系ITベンダーの中国ビジネスは、どのように推移したのだろうか。今回は中国の日系SIerを代表して4人の現地の経営トップに、2016年を振り返っていただいた。また、17年の抱負についても、ざっくばらんに語ってもらった。(取材・文/上海支局 真鍋 武)
(電通国際情報サービス)
菅沼重行
董事長総経理菅沼 全体的に引き合いは悪くない年でした。当社は今年、18年度までの3か年の中期経営計画がスタートしました。すでに1年前倒しの来年にも目標を達成しそうな事業が出てきていますが、特定の大口のお客様がIT投資を落とした影響も受け、全体の売上高は少し目標に届かないで終える見込みです。
――日系の大手金融機関のことですね。ほかの日系SIerでも影響を受けている企業があります。
菅沼 ええ。想定以上に落ち込んでいます。現状を維持するために、精一杯努めていきます。
――特定顧客を除くと、この1年でどのような進捗がみられましたか。
菅沼 金融業以外は、全事業で売上高・利益ともに予算を達成しました。特定のお客様を除けば、売上高は昨年比で10%以上伸びています。ERPや製造業向け設計ソリューションも堅調です。
金融業向けでも、非日系がターゲットの地域金融機関向けソリューション「BANK・R」で、年内に2つ、3つ案件が決まりそうです。リース・ファイナンス業向け基幹システム「Lamp」については、18年の予算を前倒しで達成する勢いで売れています。こちらは日系企業に好調で、中国での導入実績が高く評価され、お客様の日本本社から他地域の案件でお声がけをいただけるようになってきました。タイやインドネシアで実績が増えています。
――IT投資に対する傾向は変わってきていますか。
菅沼 日系企業のIT投資は減ると思っていましたが、実際はあまり投資を控えていない印象を受けます。最低限の情報システム化は必要で、まだそれが足りていない企業は多く残されている。また、中国は日系企業にとって重要な拠点で、例えば内部統制一つをとっても、複数の工場や販売拠点をもつ企業では、統括会社や日本本社による統制をかけていく動きが引き続き顕著です。不正防止の案件は、最終的にITの活用に行きつくため、当社にも多くの引き合いがきています。そこで現在、SAPデータ連携フレームワーク「BusinessSPECTRE」の機能強化として、ユーザーが通常とは異なる取引をした時に、不正を検知できるツールを開発しています。また、販売面でコンサルティング企業や銀行と手を組んで、一緒に提案活動も始めています。
――17年以降の方向性について教えてください
菅沼 14年4月に着任した当初から考え方は変わっていません。海外なのだから、日系企業だけでなく、非日系企業向けのビジネスを大きくするということ。これに成功している日系IT企業は少ないですが、当社はその1社になりたい。いろいろ課題もありますが、この領域を捨てていてはいけない。私が上海にいる間は、非日系ビジネスを歯を食いしばってやっていきます。
非日系ビジネスは、いかにWin-Winの関係が築ける代理店をみつけるかがポイントです。少しずつよい代理店ができて、成果が出てきました。あとは、景気動向に左右される人的サービスでなく、自社の製品・サービスを伸ばし、道を切り拓いていきたい。現在の売上高は30億円に少し満たない程度ですが、中期経営計画では35億円を目指しています。
(TIS)
小川真司
総経理小川 売上高は2ケタ成長し、増収増益で終える見込みです。計画値も達成しています。
現在、100社ほどのお客様と継続的に取引していますが、今年は製造業を中心に、中国の統括会社が主導するグループ会社向けのリピート案件が豊富でした。とくに、大口のお客様10社からは、多くのお仕事をいただくことができました。内容としては、インフラ系ではハードウェアの更改や集約、アプリでは会計・人事・経費精算など、グループ会社が共同利用するシステムの案件が中心です。
そういう意味では、日系企業のIT投資は、予想していたよりも落ち込みませんでした。製造業では、日系の輸出型生産企業のIT投資は減っているものの、中国国内で販売をしている企業からは、投資を控えるムードは感じられません。
また、当社ビジネスの根幹となるお客様では、中国だけでなく、タイや日本での案件にも携わるケースが増えています。実際、この1年間で、10人ほどの中国人技術者を海外に送りました。中国でグローバルでのIT活用モデルケースをつくって、それを他地域に展開する企業は増えています。
――17年についてはどうみておられますか。
小川 来年はやや厳しくなってくるとみています。例えば、日系の大手金融機関がIT投資を減らしていますよね。当社は、一定規模のボリュームのお仕事をいただいていますが、来年の中頃に請け負っている案件が終わりますので、その後は影響が出てくることになります。
――それでは、どのようにビジネスを拡大していきますか。
小川 ただし、金融業向けビジネスを縮小するつもりはありませんので、生き残りをかけて競争していきます。顧客層を広げたり、お客様との関係を強化したりする努力が必要です。
また、17年は非日系企業向けのビジネスを拡大していきます。当社の顧客は、まだ大部分が日系企業ですが、この1年でローカル企業の案件をいくつか獲得できました。とくに、地場の製造業のなかには、IT投資に積極的な領域もあって、チャンスが大きい。例えば、あるお客様では、産業用ロボットなどの設備を積極的に導入していて、1台導入するごとに、それに付随する工程検査や実績管理のシステムの追加案件が期待できます。こうした領域で、さらに顧客を拡大したいです。
さらに、新たに金融ソリューションを開発して販売していく計画です。地場の金融機関を対象とした商材で、完全に中国で開発しています。
――17年の抱負について教えてください。
小川 今年と同等規模以上の業績を計画しています。会社ですから、市況が悪くなっても、成長を止めてはいけない。売り上げも利益も増やし続けることが、私に課せられたミッションです。
また、このところ、ずっと考えていることは、10年後のTIS上海の姿です。まだ、私のなかにある想いの段階ですが、日系・非日系を含め、10年後にもお客様とつき合って、きっちりとしたサービスを提供できる体制をつくりたい。社員とも話をしていますが、10年後に役に立つことならば、今すぐに投資して勉強しなさいと勧めたり、いろいろな判断基準にしています。その一環として、特色のある得意分野を磨くために、技術力の向上にも努めています。10年先を大事にするお客様と深くおつき合いをしていきたいですね。
(SCSK)
飯田洋一郎
総経理飯田 今年は変革期にあたる年でした。SCSK上海は、来年2月に設立10周年を迎えますが、この10年間で、中国の景気や日系企業の状況は大きく変わりました。今までは、住友商事グループ向けのビジネスが中心でしたが、これからはグループ外の企業に向けたビジネスも伸ばしていく必要があります。そして、その中身も変えていかねばなりません。主としてきた「SAP ERP」やその周辺システムの開発など、規模の大きな案件だけでは、大きく伸ばすことは簡単ではない。今後は、過去に蓄えたスキル・ノウハウを生かし、ソリューション・サービスを販売して、他社に展開していく。その一環として、中国のいまの市場ニーズに合わせた小回りの利く商材を増やしてきました。
――具体的には、どんなことをしているのですか。
飯田 例えば、ERPではSAPだけでなく、用友などの手軽に導入できる商材の提供を進めています。また、人事系システムでは、より中国のフレキシブルな法制度の変更にも対応でき、クラウド型で低コストで導入が可能な地場ベンダーのCDP集団のSaaSを扱い始めました。さらに物流系の倉庫管理システム(WMS)や、コミュニケーション基盤として「Office 365」など、提案のラインアップを増やしています。
今の日系企業マーケットは、我慢の時期にあると思っています。ただ、必ず投資は戻ってくると信じている。その時に成果を出すためにも、今からきちんとお客さんと関係をもち、サービスを提供し続けていきたい。そこで、こうした幅広いソリューションを使って関係を構築しようとしているのです。
――すでに成果は出てきているのでしょうか。
飯田 業績数値の観点では、それほどよいとも悪いともいえませんが、一定の成果は出せた。グループ外の新規顧客は、この1年で20%程度増えました。将来に向けた活動を着実にこなしました。
――日系企業のIT投資は落ち着いているとのことですが、ニーズに関してはどうみておられますか。
飯田 ニーズは減っていなくて、その中身が変わってきたと感じています。日系企業が中国で果たす役割は変わってきていて、中国を市場と捉え、現地でモノを売っていくためには、販売や物流網の整備が必要です。また、管理の対象も増えています。大規模なSAP導入案件は少なくなっていますが、こうした領域での話は増えています。
――来年はどんな活動に力を注ぎますか。
飯田 中国の市場ニーズにあったソリューションを、実際にお客様に展開していく段階です。また、過去はどちらかといえば、グローバルのソリューションを中国に展開するやり方でしたが、今後はさらに地場のソリューションを日系企業に展開していきます。例えば、住友商事グループが出資している中国のベンチャーIT企業の商材です。CDP集団はその1社ですが、ほかにも数社あり、現在、SCSKグループ全社で、彼らのソリューション活用について研究しています。
17年は変革の第2章です。SCSKグループが掲げる20年3月までの中期経営計画の期間内に、利益倍増、売上高1.5倍を目指します。
(東芝 インダストリアルICTソリューション社)
北川浩昭
董事長総経理北川 人事給与系システム、製造業向けシステム、プラットフォーム・SI(PF-SI)、サービスの4つの事業でビジネス拡大に努めてきました。総務系と製造系でお客様を開拓し、それをPF-SIとサービスで下支えするモデルです。ただ、体制の整備と、受注までに時間がかかるビジネスに力を注いでいることから、売上高は前年比で10%程度の伸びにとどまる見込みです。来年からは20%増のペースで伸ばしていきたいですね。
また、これまでは中国の東芝グループ向けビジネスの比率が高かったのですが、今年は彼らの投資が控えめだったこともあり、外部企業の開拓に力を注ぎました。昨年7月に上海分公司を設立したときは、瀋陽の売上高のほうが大きかったのですが、現在は売上高の85%を上海で稼いでいます。
――この1年でとくに伸びたのはどの事業ですか。
北川 上期は、人事給与系システムが好調でした。中国の東芝グループ向けにプライベートクラウド型で導入を開始し、オンプレミス型で外販も始めています。すでにグループ向けで5社、外販で2社のシステムを構築しています。
販売しているのは、自社の人財管理ソリューション「Generalist」です。人事はグローバル統一の仕様ですが、給与や勤怠は国によって形態が違うので、中国でつくり直しました。新たに勤怠パッケージをもつ地場のITベンダーとも提携しており、うまく関係を構築できています。
直近では、製造業向けシステムが好調です。IoTとMESに力を注いでいて、年明け、春節明けに開始する案件が続きます。もう少し時間がかかると思っていましたが、想定より早い段階で案件が増えています。これは、うれしい誤算ですね。
――「うれしい誤算」とのことですが、どうして製造業の案件が増えているのでしょうか。
北川 中国の製造業では、経済成長が落ち着いてきたことで、売上高の伸びが鈍化する一方、人件費などのコストが上昇して利益が捻出しにくくなっています。そこでお客様の多くは、IoTや「中国製造2025」などに期待していて、結果として引き合いが増えています。
ただし、お客様のなかには、「何からやればよいですか」という問い合わせもあって、最初のコンサルティングの部分からお手伝いすることが多いですね。これからは、安価でお手軽に導入できる「IoTスダンダートパック」という日本の商品も中国で販売していく計画です。
――御社の顧客は日系企業が中心ですが、IT投資の見通しについてはどうみておられますか。
北川 製造業に関しては、まだまだ日系企業マーケットの開拓余地はあると考えています。プラットフォームの販売だと、他社と競合することが多いですが、MESやIoTの案件では、あまり競合がありません。とくに瀋陽や大連では顕著です。
人事給与の領域も、あまり他社とぶつからないですね。一方、従業員規模1000人ほどの日系企業でも、まだExcelで管理しているところが一定層あって、システム化のニーズは増えてます。
16年は、人事、製造、サービスの各事業で種を植えたものに芽が出てきました。17年は花を咲かせたいですね。売上高は1億元を目指します。
道は拓ける
――2016年のビジネスはいかがでしたか。
(電通国際情報サービス)
菅沼重行
董事長総経理
――日系の大手金融機関のことですね。ほかの日系SIerでも影響を受けている企業があります。
菅沼 ええ。想定以上に落ち込んでいます。現状を維持するために、精一杯努めていきます。
――特定顧客を除くと、この1年でどのような進捗がみられましたか。
菅沼 金融業以外は、全事業で売上高・利益ともに予算を達成しました。特定のお客様を除けば、売上高は昨年比で10%以上伸びています。ERPや製造業向け設計ソリューションも堅調です。
金融業向けでも、非日系がターゲットの地域金融機関向けソリューション「BANK・R」で、年内に2つ、3つ案件が決まりそうです。リース・ファイナンス業向け基幹システム「Lamp」については、18年の予算を前倒しで達成する勢いで売れています。こちらは日系企業に好調で、中国での導入実績が高く評価され、お客様の日本本社から他地域の案件でお声がけをいただけるようになってきました。タイやインドネシアで実績が増えています。
――IT投資に対する傾向は変わってきていますか。
菅沼 日系企業のIT投資は減ると思っていましたが、実際はあまり投資を控えていない印象を受けます。最低限の情報システム化は必要で、まだそれが足りていない企業は多く残されている。また、中国は日系企業にとって重要な拠点で、例えば内部統制一つをとっても、複数の工場や販売拠点をもつ企業では、統括会社や日本本社による統制をかけていく動きが引き続き顕著です。不正防止の案件は、最終的にITの活用に行きつくため、当社にも多くの引き合いがきています。そこで現在、SAPデータ連携フレームワーク「BusinessSPECTRE」の機能強化として、ユーザーが通常とは異なる取引をした時に、不正を検知できるツールを開発しています。また、販売面でコンサルティング企業や銀行と手を組んで、一緒に提案活動も始めています。
――17年以降の方向性について教えてください
菅沼 14年4月に着任した当初から考え方は変わっていません。海外なのだから、日系企業だけでなく、非日系企業向けのビジネスを大きくするということ。これに成功している日系IT企業は少ないですが、当社はその1社になりたい。いろいろ課題もありますが、この領域を捨てていてはいけない。私が上海にいる間は、非日系ビジネスを歯を食いしばってやっていきます。
非日系ビジネスは、いかにWin-Winの関係が築ける代理店をみつけるかがポイントです。少しずつよい代理店ができて、成果が出てきました。あとは、景気動向に左右される人的サービスでなく、自社の製品・サービスを伸ばし、道を切り拓いていきたい。現在の売上高は30億円に少し満たない程度ですが、中期経営計画では35億円を目指しています。
10年先を見据える
――2016年のビジネスの進捗はいかがでしたか。
(TIS)
小川真司
総経理
現在、100社ほどのお客様と継続的に取引していますが、今年は製造業を中心に、中国の統括会社が主導するグループ会社向けのリピート案件が豊富でした。とくに、大口のお客様10社からは、多くのお仕事をいただくことができました。内容としては、インフラ系ではハードウェアの更改や集約、アプリでは会計・人事・経費精算など、グループ会社が共同利用するシステムの案件が中心です。
そういう意味では、日系企業のIT投資は、予想していたよりも落ち込みませんでした。製造業では、日系の輸出型生産企業のIT投資は減っているものの、中国国内で販売をしている企業からは、投資を控えるムードは感じられません。
また、当社ビジネスの根幹となるお客様では、中国だけでなく、タイや日本での案件にも携わるケースが増えています。実際、この1年間で、10人ほどの中国人技術者を海外に送りました。中国でグローバルでのIT活用モデルケースをつくって、それを他地域に展開する企業は増えています。
――17年についてはどうみておられますか。
小川 来年はやや厳しくなってくるとみています。例えば、日系の大手金融機関がIT投資を減らしていますよね。当社は、一定規模のボリュームのお仕事をいただいていますが、来年の中頃に請け負っている案件が終わりますので、その後は影響が出てくることになります。
――それでは、どのようにビジネスを拡大していきますか。
小川 ただし、金融業向けビジネスを縮小するつもりはありませんので、生き残りをかけて競争していきます。顧客層を広げたり、お客様との関係を強化したりする努力が必要です。
また、17年は非日系企業向けのビジネスを拡大していきます。当社の顧客は、まだ大部分が日系企業ですが、この1年でローカル企業の案件をいくつか獲得できました。とくに、地場の製造業のなかには、IT投資に積極的な領域もあって、チャンスが大きい。例えば、あるお客様では、産業用ロボットなどの設備を積極的に導入していて、1台導入するごとに、それに付随する工程検査や実績管理のシステムの追加案件が期待できます。こうした領域で、さらに顧客を拡大したいです。
さらに、新たに金融ソリューションを開発して販売していく計画です。地場の金融機関を対象とした商材で、完全に中国で開発しています。
――17年の抱負について教えてください。
小川 今年と同等規模以上の業績を計画しています。会社ですから、市況が悪くなっても、成長を止めてはいけない。売り上げも利益も増やし続けることが、私に課せられたミッションです。
また、このところ、ずっと考えていることは、10年後のTIS上海の姿です。まだ、私のなかにある想いの段階ですが、日系・非日系を含め、10年後にもお客様とつき合って、きっちりとしたサービスを提供できる体制をつくりたい。社員とも話をしていますが、10年後に役に立つことならば、今すぐに投資して勉強しなさいと勧めたり、いろいろな判断基準にしています。その一環として、特色のある得意分野を磨くために、技術力の向上にも努めています。10年先を大事にするお客様と深くおつき合いをしていきたいですね。
変革の第二章
――2016年はどんな年でしたか。
(SCSK)
飯田洋一郎
総経理
――具体的には、どんなことをしているのですか。
飯田 例えば、ERPではSAPだけでなく、用友などの手軽に導入できる商材の提供を進めています。また、人事系システムでは、より中国のフレキシブルな法制度の変更にも対応でき、クラウド型で低コストで導入が可能な地場ベンダーのCDP集団のSaaSを扱い始めました。さらに物流系の倉庫管理システム(WMS)や、コミュニケーション基盤として「Office 365」など、提案のラインアップを増やしています。
今の日系企業マーケットは、我慢の時期にあると思っています。ただ、必ず投資は戻ってくると信じている。その時に成果を出すためにも、今からきちんとお客さんと関係をもち、サービスを提供し続けていきたい。そこで、こうした幅広いソリューションを使って関係を構築しようとしているのです。
――すでに成果は出てきているのでしょうか。
飯田 業績数値の観点では、それほどよいとも悪いともいえませんが、一定の成果は出せた。グループ外の新規顧客は、この1年で20%程度増えました。将来に向けた活動を着実にこなしました。
――日系企業のIT投資は落ち着いているとのことですが、ニーズに関してはどうみておられますか。
飯田 ニーズは減っていなくて、その中身が変わってきたと感じています。日系企業が中国で果たす役割は変わってきていて、中国を市場と捉え、現地でモノを売っていくためには、販売や物流網の整備が必要です。また、管理の対象も増えています。大規模なSAP導入案件は少なくなっていますが、こうした領域での話は増えています。
――来年はどんな活動に力を注ぎますか。
飯田 中国の市場ニーズにあったソリューションを、実際にお客様に展開していく段階です。また、過去はどちらかといえば、グローバルのソリューションを中国に展開するやり方でしたが、今後はさらに地場のソリューションを日系企業に展開していきます。例えば、住友商事グループが出資している中国のベンチャーIT企業の商材です。CDP集団はその1社ですが、ほかにも数社あり、現在、SCSKグループ全社で、彼らのソリューション活用について研究しています。
17年は変革の第2章です。SCSKグループが掲げる20年3月までの中期経営計画の期間内に、利益倍増、売上高1.5倍を目指します。
花を咲かせる
――東軟集団との合弁を解消し、体制を刷新してから約1年半が経過しました。2016年はどのような領域に力を注いできましたか。
(東芝 インダストリアルICTソリューション社)
北川浩昭
董事長総経理
また、これまでは中国の東芝グループ向けビジネスの比率が高かったのですが、今年は彼らの投資が控えめだったこともあり、外部企業の開拓に力を注ぎました。昨年7月に上海分公司を設立したときは、瀋陽の売上高のほうが大きかったのですが、現在は売上高の85%を上海で稼いでいます。
――この1年でとくに伸びたのはどの事業ですか。
北川 上期は、人事給与系システムが好調でした。中国の東芝グループ向けにプライベートクラウド型で導入を開始し、オンプレミス型で外販も始めています。すでにグループ向けで5社、外販で2社のシステムを構築しています。
販売しているのは、自社の人財管理ソリューション「Generalist」です。人事はグローバル統一の仕様ですが、給与や勤怠は国によって形態が違うので、中国でつくり直しました。新たに勤怠パッケージをもつ地場のITベンダーとも提携しており、うまく関係を構築できています。
直近では、製造業向けシステムが好調です。IoTとMESに力を注いでいて、年明け、春節明けに開始する案件が続きます。もう少し時間がかかると思っていましたが、想定より早い段階で案件が増えています。これは、うれしい誤算ですね。
――「うれしい誤算」とのことですが、どうして製造業の案件が増えているのでしょうか。
北川 中国の製造業では、経済成長が落ち着いてきたことで、売上高の伸びが鈍化する一方、人件費などのコストが上昇して利益が捻出しにくくなっています。そこでお客様の多くは、IoTや「中国製造2025」などに期待していて、結果として引き合いが増えています。
ただし、お客様のなかには、「何からやればよいですか」という問い合わせもあって、最初のコンサルティングの部分からお手伝いすることが多いですね。これからは、安価でお手軽に導入できる「IoTスダンダートパック」という日本の商品も中国で販売していく計画です。
――御社の顧客は日系企業が中心ですが、IT投資の見通しについてはどうみておられますか。
北川 製造業に関しては、まだまだ日系企業マーケットの開拓余地はあると考えています。プラットフォームの販売だと、他社と競合することが多いですが、MESやIoTの案件では、あまり競合がありません。とくに瀋陽や大連では顕著です。
人事給与の領域も、あまり他社とぶつからないですね。一方、従業員規模1000人ほどの日系企業でも、まだExcelで管理しているところが一定層あって、システム化のニーズは増えてます。
16年は、人事、製造、サービスの各事業で種を植えたものに芽が出てきました。17年は花を咲かせたいですね。売上高は1億元を目指します。
今年も残すところあとわずか。この1年間、日系ITベンダーの中国ビジネスは、どのように推移したのだろうか。今回は中国の日系SIerを代表して4人の現地の経営トップに、2016年を振り返っていただいた。また、17年の抱負についても、ざっくばらんに語ってもらった。(取材・文/上海支局 真鍋 武)
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