日本の南極観測で日立製作所のOT(Operation Technology)人材が活躍している。現在、南極に向かっている第58次日本南極地域観測隊には、大みか工場から情報・システム研究機構国立極地研究所に出向している江口史人氏が越冬隊員として参加し、現地の活動を支えるインフラの保守に従事する。(本多和幸)

大みか工場からは、2年連続の派遣
第58次日本南極地域観測隊は、越冬隊、夏隊、夏隊同行者で構成され、12月に南極大陸に入り、昭和基地を拠点に観測活動を開始する。この時点では、先期(第57次)の越冬隊が残っているため、業務の引き継ぎなどを行い、来年2月1日には、第58次越冬隊のみを現地に残し、残りのメンバーは帰国する。越冬隊は、2018年2月に次期越冬隊と交代するため、1年を超える長期の滞在となる。

江口史人氏 江口氏は、この第58次越冬隊で、昭和基地の発電機と制御盤の保守・メンテナンスを担う。いずれも日立製だ。基地内のほとんどの電力をまかなう、現地の生活に不可欠なインフラであることに加え、越冬隊は最低限の人数で構成され、発電機の保守のメイン担当は江口氏一人であるため、大きな責任を背負うことになる。
また、日立製ではないものの、補助電力の供給源として、昭和基地には風力発電や太陽光発電など、自然エネルギーを活用した発電装置も設置されている。これらの保守・メンテナンスや電力データの収集、報告も江口氏の担当業務だという。今年6月に第58次南極観測隊への参加が正式に決定して以降、自分の担当業務に関係する装置については、各メーカーに出向き、整備方法を取得すべく、訓練を積んできた。
鹿児島県出身で24歳の江口氏は、第58次の南極観測隊では最年少だ。11年に日立製作所に入社し、14年1月から翌15年3月末までは、日立の社内高等教育機関である日立工業専門学院本科電気・電子工学科で学んだという経歴をもつ。出向前の大みか工場での業務は、回生電力貯蔵装置の品質保証業務。電車の車両が停止するときのエネルギーを電気エネルギーに変換して貯蔵、再利用する装置の検査を担当してきた。
上長からの推薦を受け、今回のミッションに参加することになったが、「不安がないわけではないけれども、困難を乗り越えるのを楽しいと思えるタイプ。人間関係の構築も不得手ではないので、最年少らしく越冬隊の盛り上げ役として頑張りたい」と物怖じしない。さらに、「今しかできない貴重な経験をさせていただけるのはありがたい。オーロラ観測なども楽しみにしているし、さまざまな経験をして、自分の知識と技術の幅を広げたい」と話す。一回りも二回りも大きくなって、大みかに帰ってきてくれそうだ。