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<THE決断!ユーザーのIT導入プロセスを追う>求む!サービスを育てる協力者 パッケージソリューションで新規事業を早期立ち上げ

2017/01/25 09:00

週刊BCN 2017年01月16日vol.1661掲載

 「三井のリパーク」ブランドで駐車場事業を展開する三井不動産リアルティは2016年11月、駐車場シェアリングサービスの「toppi!」を始めた。新事業を立ち上げるにあたって同社が求めたのは、単にいわれたとおりにシステム構築をしてくれるだけのITベンダーではなく、IoTなどを取り入れて同事業をパートナーとして随時発展させていくという考えを共有し、継続的に支えてくれるベンダーだった。

【今回の事例内容】

<導入企業>三井不動産リアルティ
不動産仲介事業、駐車場事業を手がける。
1969年設立。資本金は200億円、従業員数3829人。

<決断した人>
吉田儒央 リパーク事業本部事業推進部長
駐車場シェアリングサービス「toppi!」の立ち上げを主導した

<課題>
駐車場シェアリングサービスを新規事業として立ち上げようとしたが、他社がすでに先行していることもあり、まずはスピーディにシステムを構築する必要があった。

<対策>
駐車場用予約・決済のパッケージソリューションをもち、IoTソリューションをはじめ、ユニークな事例を数多く手がけるベンダーをビジネスパートナーとして選んだ。

<効果>
システム構築期間は3か月でサービスインにこぎ着けた。サービス内容の今後のブラッシュアップ、拡充についても、ビジネスパートナーとして選んだベンダーと密に連携し、議論を続けている。

駐車場シェアリングサービスに参入

 toppi!は、遊休地を駐車場として貸し出すための仲介サービスで、同社の審査で条件に適合すれば、オーナーは費用をかけずに遊休地をtoppi!の駐車車室として登録することができる。また、駐車スペースの利用者は、ホームページやアプリから車室を予約し、利用料金を事前にクレジットカードで支払い、1日単位で利用する。

 駐車場のシェアリングサービスについても、2015年に行われた総務省の調査で、「車で外出した際に空いている月極駐車場や個人所有の駐車スペースに一時的に駐車できるサービス」のニーズは他のシェアリングサービスと比べても高いという結果が出ており、潜在的な市場は大きいと判断した。また、「駐車場を探して駐める場合の時間や労力のロスを省いて、予約して駐められるようなサービスを展開し、三井のリパークのお客様のユーザビリティを向上させたいという強い思いもあった」と、三井不動産リアルティの吉田儒央・リパーク事業本部事業推進部長は説明する。

ビジネスパートナーとしての提案を評価

 こうしたtoppi!のビジネスモデルを実現するために、三井不動産リアルティは、エスキュービズムの駐車場用予約・決済システム「eCoPA」を採用した。ちょうど三井不動産リアルティが駐車場シェアリングサービスを検討し始めた時期である15年12月に、エスキュービズム側がタイミングよく「持ち込み企画的に提案した」(エスキュービズムの武下真典・取締役)のがファーストコンタクトだったという。吉田事業推進部長は、「正直にいって、その段階では、他のベンダーにもご提案いただいて検討したいと考えていた」と振り返る。しかし、結局はファーストコンタクトから約半年後、サービスの立ち上げに向けて二人三脚で走り出すことになる。「駐車場シェアリングサービスで他社が先行しているなかで、サービスを立ち上げるにしても時間はかけられなかった。すでに駐車場専用のソリューションをもち、実績があり、駐車場ビジネスの仕組みなどを理解されているエスキュービズムと組ませていただくことで、その課題に対応できると考えた」と、吉田事業推進部長は経緯を説明する。

 さらに重要だったのは、toppi!は発展途上のサービスであり、将来的なサービス内容の拡充、発展について一緒に考え、アイデアを実現するためのシステムをスピーディに提供してくれるビジネスパートナーたり得るポテンシャルを感じたことだったという。吉田事業推進部長は、次のように続ける。

 「将来的には、IoTやAIを取り入れていく可能性もある。エスキュービズムの提案をいろいろとうかがったり、ウェブサイトでさまざまなソリューションの情報や事例を拝見すると、IoTの知見、ソリューションも豊富だし、グラスを専用コースターに置くだけでビールのおかわりの注文ができるような変わった事例も手がけておられた(笑)。シェアリングサービスのような新しい世界は、ITの技術だけでなく、ビジネスを新しくつくっていくときの発想だったり、感性だったりが合うベンダーと組まないといいサービスがつくれないと思っている」。

 eCoPAの採用を決めた後は、3か月でサービスインにこぎ着けた。法人クレジットカード、請求書での支払いなど、法人ユーザー向けの機能追加やSNSログインの採用、遊休地を提供するオーナー用の管理機能の追加など、toppi!に必要な機能でパッケージに実装されていない機能を洗い出し、1か月で要件定義を終了。2か月でカスタマイズを終えたかたちだ。吉田事業推進部長は、「UIなどもかなり変えてもらったが、スピード感は申し分なかったし、SNSログインなど、われわれでは発想できなかったであろうアイデアも出していただき、期待以上だった」とエスキュービズムとのコラボレーションを評価する。

 次のステップとしては、1日単位ではなく時間貸しでの予約サービスを検討していく。toppi!は、駐車スペースそのものにはほとんど追加の設備投資をせずにスモールスタートするため、現状、パイロンを置いて使用状況を示すアナログ的な手法を採っている。しかし時間貸しにする場合は、何らかの機器・センサを設置する必要が出てくる。17年度(18年3月期)中には具体的な検証を始める予定だ。将来的には、ヘタ地の宅配受取用ロッカーとしての活用なども構想しており、「toppi!のプラットフォームや顧客基盤を活用して、さまざまなサービスを横展開できると考えている。エスキュービズムにはその点でも期待している」(吉田事業推進部長)という。(本多和幸)
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