SAPジャパンは、この4月に向けて、PaaS事業を一段と拡大させる。PaaSは「SAP HANA Cloud Platform」で、昨年末までに同社が独自に開設した東京のデータセンター(DC)に加えて、大阪DCも3月末までに開業する。このタイミングに合わせてPaaS事業を前面に打ち出していくとともに、ビジネスパートナー向けのHANA Cloud Platformに関連する技術者認定制度の運用も本格的に立ち上げる。同PaaSでは、従来のERPだけでなく、SoE(価値創出型システム)領域のアプリケーションも取り込んでいくことでビジネスの幅を広げていく。(安藤章司)

PaaSでアプリ開発の効率が向上

 SAP HANA Cloud Platformは、HANAデータベース、モバイルやIoT、データ分析、オムニチャネルへの対応モジュール、情報セキュリティ、そしてSalesforceをはじめとする外部サービスとの接続口といった機能をクラウド上に実装したPaaS基盤だ。さまざまなミドルウェアやソフトウェアモジュールが用意されているため、SAP連携のアプリケーションや業種テンプレートを「高効率、短期間で開発できるようになる」(川中健・ビジネス企画部シニアディレクター)のが大きなメリットである。
 

SAPジャパンの川中健シニアディレクター(左)と梅沢尚久シニアスペシャリスト

 SAPジャパンは、3月末に東京と大阪の東西2か所のDCが揃うタイミングに合わせて、4月から国内でのHANA Cloud Platformを中心としたPaaS事業を本格的に拡大させる。ERP(統合基幹業務システム)系のデータを海外のDCで運用するのを躊躇するユーザーが多い状況と、東西で相互にバックアップをとれる体制が整ったこと、さらには、ERPのクラウド環境への移行、SoEに対するニーズが顕在化していることから、「HANA Cloud Platformへの引き合いがここ1年で急速に増えている」(梅沢尚久・パートナーセールスシニアスペシャリスト)と強い手応えを感じている。従来のオンプレミス型のSAP製品と連携させるケースも増えている。

非ERP系、SoE領域に本格進出

 開発言語も従来のSAP固有のABAP(アバップ)ではなく、HANA Cloud PlatformではJavaにも対応している。このため、例えば、キヤノンITソリューションズが開発するJava系のウェブアプリケーションを自動生成する開発ツール「Web Performer(ウェブパフォーマー)」のようなツールも活用可能。すでに、キヤノンITソリューションズはコベルコシステムと協業して、SAP向け業種テンプレートをWeb Performerで自動生成し、HANA Cloud Platform上で動かす取り組みを始めている。

 もう一つの方向性は、SoE領域をはじめとする非ERP系のアプリケーションの取り込みである。長野県にある松本山雅フットボールクラブのスタジアムへのシャトルバスの運行情報は、スマートフォンでリアルタイムで表示される。このシステムは、MinoriソリューションズがHANA Cloud Platform上で開発した。

 他にも福井県の京福バスが、心拍数などの生体情報を取得できる機能素材を活用して、運転手の疲労度を計測。HANA Cloud Platform上で分析することで事故低減の実証実験に取り込むなど、非ERP系の活用が進んでいる。生体情報を取得できる機能素材「hitoe(ヒトエ)」はNTTが東レと共同開発している。

 SAPジャパンの川中シニアディレクターは、「これまでSAPのERPと直接接点がなかったビジネスパートナーも増えている」と、HANA Cloud PlatformによってSAP商材の販路が多様化していると指摘。今後は同Platformに関連する技術者の育成やパートナー認定制度も立ち上げていく。

 グローバルでみるとSAPは、PaaSをはじめBI(ビジネスインテリジェンス)やモバイル、データベースといった非ERP系の売り上げがすでに過半数に達しており、グローバルに比べて若干遅れ気味だった国内でも、HANA Cloud Platformの本格的な拡大期にタイミングを合わせるかたちで、商材や販路の多様化に努めていく方針だ。

エンタープライズ向けIaaSでは“SAP HANA認定”が基準に

 「基幹業務で使える」。日本マイクロソフトが、1月16日にリリースした「Microsoft Azure」の大規模仮想マシン「Gシリーズ」の説明である。ただ、基幹業務で使えるといっても、どの程度なのかを示す基準が必要となる。そこで使われたのが、SAP HANA認定だ。
 

「Microsoft Azure」の東日本リージョンにおいて、
大規模仮想マシン「Gシリーズ」の提供を開始したと発表した米マイクロソフトの
マーク・サウザ・クラウド&エンタープライズグループ・ゼネラルマネージャ

 Gシリーズは、CPUのコア数によって「G1インスタンス」から「G5インスタンス」まで設定されていて、G5インスタンスに「Premium Storage」を付加した「GS5インスタンス」がSAP HANA認定を受けている。そして、ハイスペックなサーバー環境を要求するSAP S/4HANAの運用に対応している。SAP S/4HANAが運用できるのであれば、“基幹業務で使える”というわけだ。

 SAP HANA認定をエンタープライズ向けIaaSの証しとしているのは、アマゾン ウェブ サービス ジャパンも同じ。同社の「Amazon EC2 - X1インスタンス」は、SAP HANA認定を受けていて、基幹業務に最適なクラウドサービスであることをアピールしている。

こうした二大クラウドベンダーの動きから、SAP HANA認定が基幹業務に使えるIaaSの基準として活用されることになりそうだ。なお、Microsoft AzureのGシリーズは、0.5TB未満のRAMという限定で東日本リージョンから提供される。