オンプレミス型システムのITインフラを構築する製品の提供に焦点をおく日本ヒューレット・パッカード。あくまでも、ハードウェアの提供にこだわって市場で主導権を握ろうとしている。現在、独自のアーキテクチャを開発しているほか、他社とは一線を画したハードウェアでビジネスの拡大を図る。ハードウェアに特化した戦略で、果たして他社との差異化につながるのだろうか。(佐相彰彦)

とことん製品を絞り込む

西村 淳
常務執行役員

 日本ヒューレット・パッカードがフォーカスしているのは「ITインフラ」。時代は、クラウドサービスが台頭しながらもオンプレミス型システムも残るハイブリッド環境の方向に進んでいる。西村淳・常務執行役員エンタープライズグループ事業統括エンタープライズパートナー営業統括は、「クラウドとオンプレミスがスムーズに連携するための対応、モビリティ環境の整備、IoTの登場、単体製品の提供からソリューションの提案など、ITベンダーのビジネスが変化しつつあるなか、最適なものを提供していかなければならない。そこで当社が選択したのが、ハードウェアと、それを支えるテクノロジーだ」と説明する。

 米本社に先立ち、日本ヒューレット・パッカードが分社化したのは2015年8月。パソコンなどクライアント端末を提供する日本HPと、サーバーなどITインフラを提供する日本ヒュレーット・パッカードの2社となって再スタートを切った。「ヒューレット・パッカード」側では分社後も、とことん製品を絞り込んでいった。米国では昨年、パブリッククラウドのIaaSとして提供していた「HP Helion Public Cloud」のサービス終了を発表。法人向けサービス事業のスピンオフも発表している。「製品やサービスが複雑化しているなかで、シンプルな戦略で攻めていく体制が整った」と西村常務執行役員はアピールし
ている。
 

「The Machine」がカギ

 ハードウェア市場が厳しいといわれて久しい。その状況下、ハードウェアに特化しているのは勝算があるからだ。それが、独自アーキテクチャとして開発中の「The Machine」となる。

 これまでのアーキテクチャは、CPUやDRAM(メモリ)、ストレージデバイス、ネットワークデバイスという基本構成をとっているが、The Machineはメモリとストレージデバイスを大きく変更。「ユニバーサルメモリ」と称して、DRAMとSSD/HDDなどを一つにまとめようとしている。メモリとストレージが統合することによって、I/Oのボトルネックが解消され、パフォーマンスが高速化。消費電力の劇的な軽減にもつながる。セキュリティという点でもメリットをもたらす。従来は、階層化されたシステム構成で多くのコードとクエリが実行されるために攻撃対象となっていたが、The Machineでは、シリコンレベルでセキュリティ機能の実装を可能にして問題を解決するという。西村常務執行役員は、「The Machineが価値の高いハードウェアを提供するためのカギ。これによって、他社と圧倒的な差異化を図ることができる」と断言する。

各用途に対応したラインアップ

 このアーキテクチャが市場に出てくるのは20年となる。では、足元のビジネスはどう手がけていくのか。西村常務執行役員は、「性能重視ワークロード向けに『HPE 3PAR』、仮想ワークロードに特化した『HPE Hyper Converged』、個別ワークロード専用の『HPE ProLiant DL/ML』など、さまざまな用途に対応している。今年入ってから新型インフラストラクチャ『HPE Synergy』の販売を開始した。ITインフラを構成するハードウェアで、他社との競争に十分に勝てる製品が揃っている」と自信をみせる。

 また、IoT関連で「HPE Edgeline Converged IoT Systems」を発売。「エッジコンピューティング」として、できるだけ「モノ」に近い場所でのデータの収集・集約、「モノ」の制御を、安全でリアルタイムに行うことができる製品だ。リモートでサーバーと同じように管理できるほか、屋外での設置を想定して耐久性も追求している。「今年は『IoTの普及元年』といわれているだけに拡販に期待できる」と西村常務執行役員は期待を寄せる。

販社にとっては扱いやすい!?

 性能を追求したハードウェアが日本ヒューレット・パッカードにとっては、他社との競争に勝つ武器と捉えているわけだが、販社にとっては扱いやすい商材なのか。その問いに西村常務執行役員は、「他社製品と比べれば扱いやすい」といい切る。

 高性能という点で、他社製品と比べて価格が高いのは否めない。にもかかわらず、販社が扱ってくれることを想定しているのは、「販売パートナーも、競合と一線を画した製品でユーザー企業のニーズにマッチしたソリューションを提供したいと意識している。他のメーカーは、ハードウェアの性能を追求しているケースが少ない。一方、当社の製品は高性能であるため、柔軟にソリューションを創造することができるのではないか」(西村常務執行役員)と分析しているからだ。加えて、「今後は、価格勝負というよりもユーザー企業が本当に求めている製品・サービスを提供することが重要になってくる」と訴えている。

 販社支援では、パートナー制度の「HPE Partner Ready」を提供している。販社を四つのレベルに分けて、それぞれのレベルに応じて「販売実績報奨金プログラム」「戦略製品特別報奨金プログラム」などを提供している。上のレベルであればあるほどベネフィットが高くなる。「ハードウェアは儲からない」という概念を覆して、日本ヒューレット・パッカードでは販社が収益を確保できる環境の整備に力を注いでいる。このプログラムに賛同する販社の増加が日本ヒューレット・パッカードのビジネスを左右する。