富士通グループのPC事業を担う富士通クライアントコンピューティング(FCCL、齋藤邦彰社長)は2月22日、同社の発足1周年を記念して「FCCLの匠」体験会と称したイベントを開催。製造拠点である島根富士通の工場内部やデモ設備を、メディアや地元関係者などに公開した。富士通グループは、レノボとPC事業での戦略的提携の検討を進めている。今回のイベントでは、富士通グループのPCメーカーとしての実力を広く知らしめ、レノボとの協業の折衝でもなんとか主導権を握りたいという思いが透けてみえたという印象だ。(取材・文/本多和幸)

デジタル変革を支える技術がある

富士通
河辺本 章 執行役員専務

 富士通は2016年2月1日、PC事業を分社化してFCCLを設立した。さらに、同10月には、PC事業の統合も視野に、戦略的提携の検討を進めていることを明らかにした。富士通の田中達也社長は、過去、週刊BCNの取材に対して、「いままでの蓄積により富士通はPCでも大変いい技術をもっているが、市場がこれだけコモディティ化するなかで、甘えを排して独立組織として成長を模索するために分社化した。そして、当社技術の特徴をお客様により認めてもらうためには、一つの選択肢としてグローバルのPC市場で非常に大きな実績を残しているレノボとの事業的な統合の検討を進めるべきだと判断した」とコメントしている。こうした経緯があって設立1周年を迎えたFCCLだが、今回の「FCCLの匠」体験会には、並々ならぬ力の入れようだったといえよう。地元関係者などのほか、法人向けITビジネスの専門メディアだけでなく、家電情報誌、一般紙、経済誌、テレビ局などを含め、約80人の報道関係者を島根富士通に招いた。


 

富士通
河辺本 章 執行役員専務

 冒頭、挨拶に立った富士通の河辺本章・執行役員専務は、「富士通は今後、デジタルサービスに舵を切り、デジタルトランスフォーメーションに注力していくわけだが、ほかの会社との違いは強固なテクノロジーを基盤としたサービスカンパニーであること。FCCLのなかにも強いテクノロジーがたくさんある。島根富士通の生産ラインは、富士通の工場のなかでも最高水準だと自負しており、そこでつくれられた高品質な製品をいかにサービスに結びつけていくかという視点でのさまざまな取り組みもじっくりご覧いただきたい」と呼びかけた。 さらに、島根富士通の宇佐美隆一社長も、「富士通ならではの“匠の技”とは、クラフトマンシップの要素もあるが、本質は、一つひとつは小さくてもさまざまな改善を継続的に組織として積み上げ、ものづくりの現場でイノベーションを起こしてきたことだと思っている」と、同社の製造会社としての強みを説明した。


 

教育向けエッジコンピュータ

顧客ごとの細かなニーズに対応

富士通クライアント
コンピューティング
齋藤邦彰
社長

 FCCLの齋藤社長は、同社のPC事業の特徴について、「過去35年のPCビジネスのノウハウを生かして、お客様にベストフィットな商品を提案できる。とくに法人向け製品では、お客様ごとに非常に細かいカスタマイズや特別仕様のご要望があり、そうしたニーズにも対応し、パターンオーダーからフルオーダーまで、さまざまなレベルでオーダーメイドの設計・製造を行っている。さらに、国内に製品の企画開発から製造、サポート、修理まですべての機能を集結させていることが、こうした価値を支えている」と解説した。製造ラインの公開にあたっては、同一のライン上で個別のカスタマイズや複数製品の製造に対応が可能なPC組み立てラインを構築している様子を披露。人と機械の「協調生産」をベースに、より効果的な自動化を進めてきたという。

 顧客にフィットする商品提案という観点では、ワークスタイル変革のトレンドにより、携帯性の高いノートPCのニーズも高まっているが、新素材のマグネシウムリチウム合金をきょう体に採用した13.3型ノートPCの「LIFEBOOK UH75/B1」では、761グラムという世界最高水準の軽量性と、ビジネスユースに耐え得る頑丈さを実現した。これを支えるのも、島根工場の技術力だ。R&D部隊と連携した多品種小ロット生産対応のプリント基板実装ラインがあり、「薄型化や軽量化を追求する際に、競合他社に対する優位点になっている」(島根富士通担当者)のだ。
 

同一のライン上で個別のカスタマイズや
複数製品の製造に対応可能なPC組み立てラインを構築



761グラムという世界最高水準の軽量性を実現した
「LIFEBOOK UH75/B1」

 さらに齋藤社長がFCCLの強みとしてアピールしたのが、「離席検知による画面オフや手のひら静脈認証など、富士通独自のセキュリティソリューションと組み合わせて、ワークスタイル変革そのものをお客様にご提案できる」点だ。それぞれの技術のデモも行った。とくに手のひら静脈認証を実装した最新のタブレット端末は、金融や保険の営業部隊など、個人情報を扱う業務の現場でニーズが急速に高まっており、引き合いも増えているという。また、同社が高いシェアを誇る文教分野でも、目下開発中の教育向けエッジコンピュータを活用したスマートルームソリューションのデモを行った。教室内の通信環境の最適化や外部からの不正アクセスの遮断、各デバイスのリモートでのメンテナンスやサポートなどを実現する。こうした機能を支えるのは、独自開発したチップ「EastChip」で、FCCLの幅広いR&Dの実力を強調したかたちだ。
 

静脈認証を実装した最新のタブレット端末

 なお、レノボとの統合について齋藤社長は、「協議中でまだ何も決まっていないとしかいえない」としたが、同社の競争力の源泉となる施設は維持すべきとの意向も示し、島根工場の現製造ラインをそのまま活用したいという思いを滲ませた。