インサイドセールスの力をパートナーにも還元

 昨年9月、米デルが米EMCの買収を完了し、エンタープライズ事業を担うDell EMCをはじめ、七つの事業ブランド・傘下企業を擁する巨大総合ITベンダーとして、デルテクノロジーズが発足した。これまでのところ、日本市場での同社の存在感は、旧EMCが主戦場としてきた大企業向けビジネスの領域でより高まっているという印象だが、実は旧デルが強さを発揮してきた中堅企業向け市場でも、両社のポートフォリオの融合を踏まえた新たな試みを始めている。キーワードは、「ひとり情シス支援」だ。(本多和幸)

 デルは、昨年12月から今年1月にかけて中堅企業(従業員数100人~1000人)の顧客400社以上を対象に、IT担当者の置かれている状況を調査した。その結果、中堅企業のIT担当者は人員が限られ、一人で企業システムのすべてを担当する「ひとり情シス」が14%、「専任担当者なし」が13%という状況であることがわかったという。一方で、彼らが自社の経営トップの意思決定に強い影響力をもつ割合は70%と高く、デジタル変革を主導する重責を担っているという結果も出た。
 
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清水 博
執行役員
広域営業統括本部長

 デルの清水博・執行役員広域営業統括本部長は、「中堅企業のIT担当者の方々は、少ない人数で攻めのITと守りのITの両方に対応しなければならないという大きな課題を抱えていることが浮き彫りになった」と話す。同社は、その象徴がひとり情シスであり、彼らを効果的に支援できる製品戦略、販売戦略を採ることで、中堅企業向け市場で大きな成長が可能になると考えているといえよう。

 デルは、こうした調査をもとに、ひとり情シスの支援を強く意識したソリューションを続々と市場に投入している。3月には、自動故障通知ツールをバンドルし、運用負荷を削減できるサーバーパッケージを発表したほか、5月には、中堅企業向けにバックアップソリューションのラインアップを再編し、顧客のビジネスモデルやビジネス環境、データ種別などで分類した“パターン”ごとに最適な製品を体系的に整理したうえで提供する方針を示した。

 さらに、「売り方」の面では、デルが従来強みとしてきたインサイトセールスの体制をさらに強化する意向も示している。単純に人的リソースを増強するだけでなく、ITコーディネータや情報セキュリティマネジメントなどの資格取得を促し、ひとり情シスの要望や課題に幅広く応え、より高度な提案ができる人材を増やしていくという。こうした営業体制のもと、ハードウェアだけでなく、SAPやオラクル、OBC、内田洋行といったベンダーのERP、基幹業務ソフト、さらにはデルが中堅企業の利用パターンに最適化した低価格のレディメイド構成のハイブリッドクラウドなども提案していく計画だ。

 清水執行役員は、こうしたインサイドセールスの強化は、「あくまでもパートナービジネスの成長を前提にした施策」だと強調する。デルは現在、「国内中堅企業の30%にあたる2万社以上と取引口座がある」(清水執行役員)ため、こうした従来の顧客基盤、さらには強化したインサイドセールスの力をパートナーの活動と連携させることで、中堅企業向けビジネスの成長を図りたい考えだ。