ニフティクラウドをK5と融合

 富士通(田中達也社長)は今年1月、完全子会社だったニフティの事業を再編すると発表。4月1日に、コンシューマ事業をノジマに売却するとともに、「ニフティクラウド」を中心としたエンタープライズ向けクラウド事業を継承する新事業会社として、旧ニフティと同じく完全子会社の富士通クラウドテクノロジーズ(FJCT)を発足させた。国産パブリッククラウドの雄であるニフティクラウドは、どこに向かうのか。同社のトップに就任した愛川義政社長が掲げるのは、「3年以内で国内クラウド市場のナンバーワンベンダーになる」という目標だ。見方によっては無謀といえるかもしれない、意欲的なゴール設定だが、果たして勝算は……。(本多和幸)

K5の中核を担うマルチテナント型クラウド基盤

 富士通は、ニフティの事業再編を発表した際、ニフティクラウドについて、アジリティにすぐれた事業展開など、富士通本体とは異なる特徴を生かしながらも、富士通のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」のラインアップに加えていくことを明らかにしていた。ニフティクラウドを継承したFJCTの愛川社長も、ニフティクラウドがK5と融合していくことになると明言。「ニフティクラウドは、K5のポートフォリオのなかで、中核を担うエンタープライズ向けのマルチテナントのクラウド基盤を提供していくことになる。今秋あたりには、ポートフォリオを整理したうえで、具体的な新しいプロダクト・サービスが出てくるだろう」と話す。4月には、富士通のAI「Zinrai」をニフティクラウド上に搭載して富士通のサービスとして展開するなど、先行してポートフォリオの融合が進んでいる事例もすでにあるという。
 
201706151742_1.jpg

愛川義政
社長

 FJCTのトップとして白羽の矢が立った愛川社長は、旧ニフティ出身ではなく、前職は富士通九州システムズ取締役執行役員常務。もともと富士通九州システムズのプロパーで、同社や富士通本体でキャリアを積み、富士通グループ全体の先陣を切って、農業や畜産分野でIoT的な新規ビジネスの立ち上げを主導したり、富士通、ニフティ、さらにはグローバル大手ベンダー各社のクラウドサービスを活用した新ビジネスの立ち上げ、育成をグローバルで手がけてきた。また、富士通九州システムズは、長年、ニフティとR&Dで協業してきた経緯もあり、愛川社長はそうした局面でもニフティとのパイプ役を担ってきた人材だという。この人事には、ニフティクラウドを富士通のクラウドポートフォリオにより一体感のあるかたちで取り込み、K5の機能強化、ブランド力強化を推進しつつも、FJCTが従来の特性をスポイルせずに、「ミニ富士通」的ではない独自の成長も模索してほしいという富士通経営陣の期待が表れているといえそうだ。

 すでにFJCT側と、富士通本体でK5のビジネスに携わるマーケティングや開発チームはミーティングを重ねていて、ニフティクラウドと既存のK5のポートフォリオを補完的に融合させるための青写真は完成しつつある。例えば、「オンプレミスのシステムを比較的安価、容易にリフト&シフトでクラウドに移行したいようなケースでは、事例の豊富さからいっても、従来のK5と比べてニフティクラウドに一日の長がある」と、愛川社長は話す。

 一方で、愛川社長の目からみると、従来のニフティクラウドには、品質面で“富士通基準”に満たない部分があるといい、すでに富士通本体と連携して強化策を打っているという。「旧ニフティはもともと富士通の完全子会社ではあったものの、お互いに違う会社としてやってきたところがある。FJCTが発足して社長に就任して最初の大きな仕事は、その壁を取り払うことだった。それはこの数か月である程度達成できたと思っている。富士通側にもニフティクラウドの価値を認めてもらって、一緒にK5シリーズとしてビジネスをやっていこうという体制ができてきた」。

富士通グループのチャネルが最大の強み

 富士通はK5について、リリース当初から汎用的なパブリッククラウドとして規模の追求を諦めないというメッセージを掲げていた。しかし、田中社長への過去のインタビューなどから判断すると、AWSやAzureにクラウドサービスとして真っ向から挑んでいくという方針ではなく、K5はあくまでも、富士通のSI力を生かすための独自のクラウド基盤オプションという位置づけが実際のところだったのではないかと思える。しかし愛川社長は、「FJCTとして、少なくとも日本市場では、3年以内に国内市場でナンバーワンになりたい」と断言した。具体的かつ詳細な指標については明かさなかったが、パブリック型のクラウド基盤サービスベンダーとして、少なくとも国内ではAWSを凌ぐプレゼンスを獲得することを目指していることは間違いない。しかし、これは果たして現実的な目標なのだろうか。

 愛川社長は、「富士通グループとポートフォリオを統合することの強みは、何よりも富士通グループのチャネルを全面的に活用できるようになるということ。これはほかのどのベンダーにもないアドバンテージ。富士通本体、FJCT、パートナーを含めて本気になれば、3年で国内で一番になるというのは無理な話ではないと思っている」と自信をみせる。

 富士通本体のSI力を生かすという性質上、K5はこれまで大企業向けの側面が強かったというのは、愛川社長も認めるところ。ニフティクラウドをK5に組み込むことで、K5ブランドを中小企業向けにも本格的に拡販していく流れを加速させたい考えだ。さらには、富士通グループのSMBビジネスとパートナー営業を担う富士通マーケティング(FJM)が提供する独自商材「AZCLOUD IaaS」もニフティクラウドを基盤として活用してきたが、このAZCLOUD IaaSシリーズも含めて、富士通グループ全体として、SMB向けクラウド基盤製品・サービスのラインアップを何らかのかたちで再編する可能性もありそうだ。

 また、FJCTはIoTビジネスの創出を上流から下流までワンストップでサポートする「IoTデザインセンター」を整備しているが、こうした機能を使いながら、パートナー、ユーザーを支援し、共創・協業の輪を広げていくという。「セルフサービス型のメガクラウドのようにクラウド基盤を提供して終わりではなく、パートナーと協力しながら、最終的にお客様にどれだけの価値を提供できるのかにこだわることで、日本のユーザーならではのデジタル変革のニーズに応え、市場シェアを拡大する」(愛川社長)方針だ。