VRで高所落下や感電の恐ろしさも体験

 日立システムズフィールドサービスは、今年で14回目の「工事技能競技会」を開催した。設備工事やIT保守、ビジネスパートナー会社の約100人の技術者が競技に参加。競技会の名称に「工事」とついているが、近年ではデジタライゼーションの流れのなかで、ITの活用領域が急速に広がっているため、IT保守サービスの人員も数多く参加しているのが特徴である。また、今回は安全対策の重要性を再認識してもらうために、初めて仮想現実(VR)を使った高所からの落下や感電の恐ろしさを体験する場も設けた。今後は、VRを活用した教育プログラムも導入していく予定だ。(取材・文/安藤章司)

競技会ではIT要素が満載

幸野淳司
センタ長

 工事技能競技会では、サーバーラックやATM(現金預け払い機)の設置工事や、電源が入った状態でサーバーラック内の部品を交換する作業(写真1参照)、高所や足場の不安定な場所での配線作業などの競技が行われ、制限時間内に安全・的確に作業が行われているかを審査する。日立システムズグループとビジネスパートナー(協力会社)の若手技術者を中心に100人ほどが参加しており、「腕に自信のある同世代が技を競い合うことで、技能により磨きをかける」(日立システムズフィールドサービスの幸野淳司・サービスクオリティサポートセンタセンタ長)ことを目的としている。

 日立システムズフィールドサービスは、もともとはデータセンターや電算室の電源、空調の設置工事(設備系)、サーバーなどのIT機器の保守(IT保守)を手がけていたことから、設備工事系とIT保守系の両方の技術者を擁している。近年では電気自動車(EV)向けの充電施設「EVスタンド」や太陽光発電向けの発電パネルの設置工事といった新しい領域にビジネスの幅を広げている。
 

(写真1)電源が入ったままのサーバーラックで作業をする競技

ビジネスパートナーと二人三脚で

 新領域はデジタライゼーションやIoTと密接な関係にあり、ITを活用して設備を管理することも珍しくない。新領域へと活動領域が増えるに伴って、設備とIT保守の業務がますます隣接するようになったり、さまざまなビジネスパートナーと協業する機会も一段と増えている。こうした現状を踏まえて、競技会では従来主流だった設備工事系の競技種目に加えて、デジタル系の課題を増やしたり、ビジネスパートナーにもこぞって参加してもらうなど、多様性に富んだ競技内容へと変貌を遂げている。

 2人組で行う種目では、できる限り日立システムズグループとビジネスパートナーの技術者と組む。会社が違うと使う用語が異なったり、些細な違いがサービス品質に影響する可能性もある。競技を通じて「協業関係の強化に努める」(幸野センタ長)ことでよりスムーズな協業を実現する。

 また、競技会場となった技能開発訓練施設の「テクニカルスキルデベロップメントセンタ」では、高所や足場が不安定な施工現場や、電源が入ったままのサーバー、ATMやIT機器を設置する“床”を模したコンクリート板など、技術者が現場で直面する環境を忠実に再現。コンクリート板のなかには配管や配線が埋め込まれており、競技者は埋設物の探査装置を使ってどこに埋まっているかを調べ、埋設物を痛めないよう機器を固定するボルトを打ち込む(写真2参照)といった、本番さながらの緊張感溢れる競技会となった。
 

(写真2)ATMやIT機器を設置する“床”を模したコンクリート板

VR教材をカリキュラムに反映へ

 今回の競技会では、高所からの落下や感電を仮想現実(VR)装置を使って“体験”する新しい試みも実施された。実際の作業では命綱や絶縁によって安全を確保しているとはいえ、落下や感電をリアルで体験するわけにはいかない。そこで360度の視界を映し出すVRゴーグルをかけて擬似的に高所から落下したり、微弱な電気を流す電極を手の先につけ、VRの映像に映し出された電源を触ることで感電の恐ろしさを体験する取り組みだ(写真3参照)。
 

(写真3)VRで「落下」や「感電」の恐ろしさを体験できるプログラム

 記者も実際に体験したが、高所から落下するときは周囲の人に体を押さえていてもらわないと思わず手足をばたつかせて転倒してしまうほどのリアルさ。感電体験でも同様で「二度と落ちたくない、感電したくない」と文字通り痛感(電)した。
 

VRで「感電」を体感するための、微弱な電気を流す電極がついた手袋

 ビジネスのフィールドが広がれば、それだけ高所や足場の不安定な場所で作業をするケースも増えることが想定されるし、24時間365日サービスを止めない利便性と引き替え、技術者は活線状態でサーバーの部品交換といった作業をするケースが増えている。日立システムズフィールドサービスでは、今後、VRを活用した教材を教育カリキュラムのなかに反映していくことで、事故を未然に防ぎ、サービス品質の向上に努めていく。