SimpliVityを選んだ理由

 日本ヒューレット・パッカード(吉田仁志代表取締役 社長執行役員、日本HPE)は、米ヒューレット・パッカードが今年1月に買収したSimpliVityのハイパー・コンバージド・インフラストラクチャ(HCI)製品「HPE SimpliVity 380」を発売した。HCI市場でNo.1シェアを目指す同社が、現在トップを誇るNutanixではなくSimpliVityを買収したのはなぜか。(山下彰子)

HCI市場を主導する NutanixとSimpliVity

 仮想化やソフトウェアなどを使ってコンピューティング、ストレージ、ネットワークを一つにまとめたHCIが注目を集めている。サーバーやストレージなどの個々のハードウェアが横ばい、もしくは縮小しているなか、HCIの市場は拡大している。この伸びしろに注目し、HCIを重要な成長戦略の柱に据えているベンダーは多い。

 HCI市場のなかで突出しているのが先駆者的存在のNutanixだ。Dell EMCやレノボ、シスコシステムズなどがNutanixの技術を採用したHCIハードウェアを提供している。さらに今年5月には、米Nutanixと米IBMが新たなワークロードをハイパー・コンバージド・システム上に展開するため、複数年のパートナシップを結んだ。Nutanixを担ぐベンダーが増え、市場での存在感も増している。今やNutanixはHCI市場のトップベンダーに上りつめた。

 そうしたなか、米HPEがNutanixに次ぐHCIベンダーのSimpliVityを買収した。HPEはすでにハイパーバイザーを提供するVMware、マイクロソフトと強固なアライアンスを結び、VMware vSphereとMicrosoft Hyper-Vに対応した製品をそれぞれ販売している。今回のSimpliVityの買収は、拡大するHCI市場で確固たる地位を築くことが目的だ。それではHPEがSimpliVityを選んだ理由とは何だろうか。
 
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ジャンポール・ボバイルド
米HPE ソフトウェアデファインド
データセンター
アジアパシフィック部門
ゼネラルマネージャ

 「HPE SimpliVity 380」の発売に合わせて来日した米HPEのソフトウェアデファインドデータセンター アジアパシフィック部門ゼネラルマネージャのジャンポール・ボバイルド氏は、HCIベンダーの買収を決める際「SimpliVityにするかNutanixにするか、正直悩んだ」という。SimpliVityもNutanixもHCI市場ではトップクラスのベンダーだ。しかも、SimpliVityは日本法人がないため、日本市場での認知度は低い。それでもSimpliVityを選んだのは、「Nutanixを担ぐベンダーはすでにあり、差異化が難しい。そして何よりSimpliVityの技術を高く評価している」と話した。HPEが高く評価している技術こそ、実用性を高めたストレージ機能だ。

実用レベルのストレージ機能が強み

 日本HPE データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括 DCHC製品統括本部 サーバー製品本部の中井大士本部長は、「HCIがコンピューティングとストレージ機能を統合するために妥協してしまった機能」としてデータ圧縮や重複排除などのストレージ機能をあげた。この機能を搭載するHCIはあるが「性能の劣化が激しく、実用レベルにない」と指摘。この他社が妥協してしまったストレージ機能を、実用レベルで実装している点がSimpliVityの特徴というわけだ。

 SimpliVityは、FPGAベースのアクセラレーターカードを搭載し、負荷のかかるストレージ機能をこのアクセラレーターカードで処理している。そのため、メインの仕事を邪魔せず、I/O劣化なく自動で重複排除とデータ圧縮を常に行うことができる。さらに、一般的なブロックサイズ(256~8192KB)よりも細かい8KBブロック単位で重複排除処理を行うことで、「平均60~70%」という高いデータ削減率を実現した。

 データを最小化することで、ストレージの使用量を削減できるため、バックアップ/リストアの高速化にも貢献する。日本HPEによると、1TBのデータのバックアップ/リストアが約1分で終了するケースもあるという。そのため、定期バックアップを夜間に限定して実行する必要はない。なお、運用管理操作はすべて「VMware vCenter」管理コンソールに統合されており、仮想マシンの管理からパフォーマンス監視、バックアップ/リストア操作などがすべてここに一元化される。

 今回国内で発売するHPE SimpliVity 380は、HPEの2Uサーバー「ProLiant DL380 Gen9」をベースに、「VMware vSphere」仮想化プラットフォームと独自のソフトウェア・ディファインド・ストレージ(SDS)、ストレージデータ処理を行うハードウェアアクセラレーターなどを統合済みで提供する。最小2ノードから最大32ノードまで、無停止でシームレスにスケールアウトすることができる。1ノードのスペックと価格は小規模向けオールフラッシュモデル(1.92TB SSD×5)で677万7000円から。なおVMware vSphereのライセンスは別料金。
 
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HPE SimpliVity 380とFPGAベースのアクセラレーターカード

 販売パートナーは伊藤忠テクノソリューションズ、SCSK、JBCC、ソフトバンク コマース&サービス、日商エレクトロニクスの5社がすでに名乗りを上げており、海外で評価の高いSimpliVityに対する期待がみて取れる。データセンター・ハイブリッドクラウド事業統括 DCHC製品統括本部の本田昌和統括本部長は、「他社のHCIからHPE SimpliVity 380にスイッチするのに必要なコストや技術的な支援を行い、スイッチのスピードを上げる。日本ではNutanixが先行しているが、HPE SimpliVity 380で日本市場のシェア1位をとりたい」と熱望する。