「証券共通API」の提供を開始

 日本IBM(エリー・キーナン社長)が、金融業界を中心に導入が進んでいるAPI関連の事業に力を入れている。6月28日には、「FinTech証券共通API」の提供と、TISによるリテール決済ソリューション「PAYCIERGE」への「IBM API製品群」の採用を同時に公表した。今後、ほかの業界でもAPIの活用が大幅に広がるとみており、先手を打って業界での主導権を獲得したい考えだ。(廣瀬秀平)

 2017年5月、金融機関に対するAPI導入の事実上の義務づけなどを盛り込んだ改正銀行法が成立した。2年連続の改正は異例といわれており、金融業界を中心に大きな話題となった。
 
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日本IBM
三澤智光
取締役専務執行役員
IBMクラウド事業本部長

 6月28日に日本IBMで開かれた説明会で、同社の三澤智光・取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長は、「金融業界でも、安全にイノベーションを起こしやすい仕組みを整えていこうと国が主導した一つの例だ」と今回の法改正を歓迎し、「『APIを活用した新しい経済圏を創出していくべき』との考えが国にあったのではないか」と述べた。

 説明会で提供の開始が発表されたFinTech証券共通APIは、資産残高や注文履歴、取引・入出金履歴、NISA(少額投資課税制度)履歴といったFinTechサービスと証券会社のシステムをアプリケーション間で接続するインターフェースは汎用的な設計になっており、短期間でのAPI構築ができる。

 IBMは、これまでもFinTech関連のAPIの提供を積極的に進めてきた。16年2月には、「FinTech共通API」を公開し、同年9月には、「FinTechクレジットカード・信販API」を追加した。今回の提供で製品ラインアップをさらに拡充し、FinTechの分野でイノベーションを加速させることを狙っている。

 ただ、三澤専務は、「APIを使ったイノベーションは、金融機関だけのものではない」と指摘する。2000年頃に立ち上がったAPIの市場が、モバイル端末の普及に伴い、ここ10年で急激に成長していることが背景にあり、「さまざまなデバイスを使って、データをつなげていく動きはこれからも止まらない。自社のアプリと外部のアプリをAPIでつなぐこともあたりまえになっている」との考えがあるからだ。

 API関連事業の成長に向け、軸となるのがAPI管理プラットフォーム「IBM API Connect」だ。IBM API Connectは、APIの作成・公開・管理・保護までの一連の流れをカバーできるのが特徴で、「IBM DataPower Gateway」による高いセキュリティ性能が評価されている。

 今回、新たにパートナーに加わったTISをはじめ、すでに幅広い業種で導入が進んでおり、採用実績は300社以上に上る。

 三澤専務は「各クラウドベンダーが、APIマネジメントの強化に取り組んでいるなか、IBM API Connectは非常に高いシェアをもっている」と説明。

 また「よく新聞などでAPI公開と出ていたら、たいていIBMが後ろにいると思っていただいてけっこうだ」と自信をみせた。

 日本IBMでは最近、API関連の問い合わせが増えているという。事業の好調ぶりがうかがえるが、三澤専務は「IBMだけではAPIを普及できない」と気を引き締め、今後もIBM API Connectのシェア拡大やパートナーとの協力強化を着実に進める方針を示した。