生き残りをかけ、正念場

 日本IBMのディストリビュータ大手のイグアスが、この7月からJBCCホールディングスグループの連結対象から外れるかたちで独立した。同社はIBMディストリビューションを事業の柱と位置づけつつ、同時に非IBMディストリビューションの新しいビジネスの創出にも意欲的に取り組む。イグアスがVAD(付加価値ディストリビュータ)を軸とするディストリビューション事業をどう伸ばしていくのか、そして課題はどこにあるのかを探った。(安藤章司)

JBグループの売上高は大きく目減り

 日本IBMは、自社の商材をVADを介してIBMビジネスパートナーに届けるディストリビューション網を構築してきた。日本IBMのトップソリューションプロバイダであるJBグループは、VAD会社のイグアスを中心にIBMディストリビューションを支えてきた。だがこの6月末、JBグループとしては事実上、VAD事業からの撤退を決断。ボリュームを稼げるディストリビューション事業を連結対象から外すことによって、JBグループの売上高は大きく目減りすることになる。

イグアスは年商400億円規模の国内VAD会社の最大手である。そのイグアスを手放すことに至った背景に何があるのか――。

 まず、外部要因としてIBMグループがパソコンやPCサーバーを相次いで売却したことで、VADが優位に扱えるIBMのハードウェア商材が減ったことがある。レノボや日本ヒューレット・パッカードなどの製品も担ぐが、これら製品は既存大手ディストリビュータも取り扱っている。VADのなかでは大手のイグアスだが、ITディストリビュータ全体からみれば中堅どころであり、規模ではどうしても及ばないところがある。

 もう一つは、今のIBMが主力商材とするコグニティブのWatsonや、PaaSのBluemix(ブルーミックス)が、VADを中心とするディストリビューション網とは、必ずしも親和性がよいとはいえなかったことが挙げられる。結果的にWatsonの国内販売を始めるにあたって、ソフトバンクグループと協業することになったのは周知の通りである。

パートナーのビジネス変革支援がカギ

 では、VAD事業に将来がないのかといえば、それも違う。IBM独自アーキテクチャのサーバー群であるPower Systems(旧AS/400、旧RS/6000)のディストリビューションは、依然としてVADの“専売特許”である。JBグループが旧AS/400時代から綿々と蓄積してきたノウハウは、イグアスにもしっかり受け継がれている。そして、コンピュータメーカーの系列は薄らいだとはいえ、今でもJBグループを筆頭にIBMの技術体系、ソリューション体系をSIビジネスの中心に位置づけているSIerは、全国に存在している。
 
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イグアス
矢花達也 社長

 イグアスの矢花達也社長は、「VAD事業をこれからも振興していくには、IBMのパートナーのビジネスをどれだけ後押しできるか」だと話す。現実的な課題として、今のIBMの品揃えだけでITソリューションを完結させることが難しくなっているなか、イグアスはIBM商材を補完し、なおかつビジネスパートナーのビジネス変革を推進する商材を重視。イグアス自身の基幹業務システムも2018年4月を目標に稼働させることで、従来の物販中心から時間課金のクラウド型のサービス商材のディストリビューションにも、よりきめ細かく対応できるようになる見通しだ。

 具体的には、VAD網を活用するかたちでITサプライ(周辺機器)や3Dプリンタといった非IBM系のディストリビューション事業を伸ばしている。今年春からは、「MOTTA(モッタ)」ブランドで、電動フォークリフトなどに使うバッテリの復元事業を本格的にスタート。消耗したバッテリ機能を復元する専門会社と共同で特許を出願するなど、技術開発にも投資している。さらに、バッテリにセンサを取り付け、バッテリが完全に寿命を迎えてしまう前に、最も効率よく機能復元できるタイミングで交換するIoT活用型のサービス開発にも力を入れる。

 直近では郵便料金計器の開発で有名な米ピツニーボウズの国内における初のディストリビュータとして、ピツニーボウズ製品の取り扱いを始める準備を進めている。また、営業支援のSalesforceや、Amazon Web Services(AWS)を活用したクラウドインテグレータとして有名なテラスカイと提携したクラウド商材も拡充。全国のビジネスパートナー向けにSalesforceやAWS関連ビジネスの支援に乗り出す。こうした取り組みによって、「株式上場を目標に、将来的なビジネスの伸びしろや成長可能性を一段と高めていく」(矢花社長)構えだ。

 SIerや販社を結びつけるVADの存在は、日本IBMの重要な経営資源を支えるポジションにある。しかし、今のIBM商材だけでVAD事業を大きく伸ばすのは難しい。IBMとの絶妙な距離感を保ちつつ、事業を伸ばすバランス感覚が新生イグアスに求められている。
 

JBグループは利益率重視へ

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JBCC
ホールディングス
山田隆司 社長

 今回のイグアスの離脱は、JBグループがここ数年来「利益率重視へと舵を切ってきた」(JBCCホールディングスの山田隆司社長)ことも大きく影響している。ディストリビューション事業は、薄利多売の傾向が強く、利益率重視のJBグループの方向性と合わなくなってきた。かつてのJBグループは、年商1000億円突破を念頭に、事業規模を拡大。ピーク時の2014年3月期には連結売上高936億円と目標を射程距離内に捉えたこともあったが、本来、売り上げを押し上げる役割を果たすべきVAD事業が、思うように伸びなかったこともあり、結果として利益率重視へと舵を切った。