2017年度折り返し地点の採点簿

 富士通とNECという国産ベンダー両雄の2016年度(17年3月期)決算では、ビジネスモデルの変革を進め収益構造の改善に道筋をつけつつある富士通と、中期経営計画の初年度で躓き計画修正を余儀なくされたNECという対照的な姿が浮き彫りになった。それから半年が経ち、17年度上期決算も出揃った。富士通はデジタルビジネスへの注力による高収益体質への転換をさらに進め、NECは成長事業に一筋の光明を見出し年間計画の着実な達成を目指す。両者の現在地をあらためて観測してみよう。(本多和幸、山下彰子)

富士通
レノボとのPC事業の交渉が決着
上期増収増益で通期計画は変更なし

 富士通のPC事業の行く末が、ようやく定まった。16年10月に中国レノボグループ(ヤン・ヤンチン会長兼CEO)との戦略的協業を発表して以降、具体的な協業のかたちをめぐって交渉が長引いたが、11月2日、レノボグループが過半数を出資する合弁会社が富士通ブランドでPC事業を展開していくことを正式に発表した。
 
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レノボ・グループのヤン・ヤンチン会長兼CEOと握手を交わす
富士通の田中達也社長。協業発表から1年以上を経てようやく枠組みがまとまった

 富士通は16年2月にPC事業を分社化し、同事業を担う100%子会社として富士通クライアントコンピューティング(FCCL)を設立した。今後も同社が引き続き富士通ブランドのPCビジネスを継続するが、富士通は18年度第1四半期(18年4月~6月)をめどに、FCCLの株式の51%をレノボに、5%を日本政策投資銀行(DBJ)に譲渡する。富士通が受け取る株式譲渡価額は、レノボから255億円、DBJから25億円となる見込み。FCCLは社名を当面は変更せず、FCCLの齋藤邦彰社長もトップとして続投するが、富士通の連結からは外れ、レノボグループへの売却が成ったかたちだ。

 ただし、これによりレノボのPC事業は、レノボ自身のブランド、NECとの合弁ブランド、そして今回の富士通との合弁ブランドと、計3ブランドを国内展開することになる。とくにNECと富士通には激しいライバル関係があるわけだが、レノボとしては、両者を差異化してシナジーを出すことが果たして可能なのだろうか。交渉が長引いた要因でもある富士通の現有の生産ラインや雇用の確保については当面の間、現状のまま継続させることになった。しかし、レノボ側にとって経営上の合理性が見出せなければ、富士通、NECのもともとの国内生産ライン、さらにいえば富士通ブランド、NECブランドすら、将来にわたってそれぞれを別々に維持継続していくという保証はできないだろう。ちなみにヤンチン会長兼CEOは11月2日の記者会見の席上で、「日本のユーザーの選択肢の幅を広げていく」とだけコメントしている。

 一方で、富士通そのものの航路は順調といえそうだ。同社の17年度上期連結決算は、増収増益を確保した。売上高は前年同期比0.8%増の1兆9232億円、営業利益は同39.3%増の280億円となった。通期の計画としても、営業利益1850億円、最終当期利益は1450億円と、過去最高益の更新を目指す方針に変更はない。さらに、10月26日の決算発表に合わせ、富士通ビー・エス・シー(BSC)を完全子会社化することを明らかにした。富士通は昨年11月、主要SE子会社3社を吸収合併し、約1万4000人のシステムエンジニアを富士通本体に集め、3000人規模のデジタルビジネス専門部隊を立ち上げるなど、AI、IoT、クラウドなどをキーワードにデジタルビジネスの領域に資源を集中してきた。富士通BSCが強みをもつ組み込みソフトやセキュリティなどの技術力を富士通グループとして集約し、デジタルビジネスでの成長をさらに加速させたい考えだ。

NEC
パブリックが押し上げ増収増益
新規事業も緩やかに立ち上がる

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NEC
新野 隆
社長兼CEO

 NECの17年度上期決算でも、やや上向きの兆しがみえてきた。連結業績は、売上高が前年同期比7.2%増の1兆2880億円、営業利益が同94.2%増の72億円と増収増益になった。これは16年度に日本航空電子工業を連結子会社化した影響が大きい。しかし、新野隆代表取締役執行役員社長兼CEOは「(日本航空電子工業の子会社化で)パブリックは増収増益となったが、それ以外は減収減益。7月末時点の見通しに対しては、おおむね想定通りの結果になった」と楽観視はしていない。

 セグメント別に業績をみると、主軸のパブリック事業は「社会公共領域は消防、防災システムが減少」(新野社長)したが、日本航空電子工業の連結子会社化による増収でカバーし、売上高は同38.7%増の4070億円、営業利益は売り上げの増加などにより150億円(前年同期比67億円増)の利益となった。

 一方、エンタープライズ事業は、売上高が同6.0%減の1918億円、営業利益は158億円(同35億円減)と前年実績を下回った。要因は、「流通・サービス業向けの減収に加え、IoT関連の投資費用の増加などにより減益になった」(新野社長)こと。このほか、テレコムキャリア事業は、売上高が同3.7%減の2675億円、営業利益は6億円(同33億円減)。システムプラットフォーム事業は、売上高が同2.0%減の3330億円、営業利益は63億円(同14億円減)となった。

 このように、既存事業はおおむね低空飛行を続けるなか、上向きの兆しを見せるのが海外向けセーフティ事業だ。16年度連結業績では立ち上がりが遅れてしまったが、17年度上期には軌道に乗り始め、売上高は同3.1%増の887億円と増収。さらに、費用の効率化などにより利益は40億円改善。しかし58億円の赤字となった。

 主力事業では苦戦が続くものの、コスト効率化の改善や、成長期待事業が軌道に乗るなど、業績はやや上向いてきた。17年度の通期業績見通しは、売上高は前年比5.1%増となる2兆8000億円、営業利益は同19.5%増となる500億円と7月に公表した数字から変更しなかったものの、当期純利益は、当初見込みから50億円増となる350億円へ上方修正した。

 さらに来期の見通しとして、スマートエネルギー事業の見直しについても説明した。NECとNECエナジーデバイスが保有するリチウムイオン電池事業を担う持分法適用関連会社であるオートモーティブエナジーサプライ(AESC)の全株式を日産自動車へ譲渡する。さらに、日産自動車は、同社がもつバッテリ事業およびバッテリ工場と一緒に、NECのスマートエネルギー事業をGSRキャピタルに譲渡する予定だ。

 新野社長は、下期について「みなさまからの信頼を再度回復するために、年間計画を確実に達成し、期末配当の継続につなげる」と語った。