【上海発】中国で外資系のITベンダーが、モバイル通信サービスを再販できる可能性が浮上した。中国工業情報化部(工信部)は1月24日、MVNO(仮想移動体通信事業者)制度の正式な運用開始に向けた枠組みの草案を発表。外資企業によるライセンス申請を認める方針を初めて示した。現地の日系ITベンダーは、表面上は規制緩和を歓迎する一方で、実際にライセンスを取得できるかについては、疑問視する声が出ている。(上海支局 真鍋 武)

 中国のMVNO制度は、国営3大通信キャリアが寡占しているモバイル通信サービス市場で、民営企業による再販を促進させて市場競争を活性化し、ユーザーにより利便性が高いサービスを提供することを目的としたもの。工信部は2013年から試験運用を進めている。現地メディアの報道によれば、17年末時点で民営企業の42社が試験展開しており、累計で6000万ユーザーを獲得。これは、全国のモバイル通信契約数の4%に相当するという。

 これまで、MVNO制度のライセンス申請対象は中資系の民営企業のみで、工信部が13年に通知した「モバイル通信再販業務試点方案」では「中国の民営企業が海外で上場している場合も、外資の出資比率は10%未満」と厳しく制限していた。しかし、今回の「モバイル通信再販業務の正式商用に関する通告(草案)」では、「民営企業、国有企業、外商投資企業は法律にもとづいてMVNOの経営を申請できる」と明記。初めて外資企業の参入を容認する方針を示した。中国政府はこのところ外資企業に対する規制緩和の姿勢を示しており、昨年10月の共産党大会では、習近平総書記(国家主席)が「外商投資の合法的権益を保護する。わが国の域内で登記したあらゆる企業を同一に扱い、その待遇を平等にする」と強調した。

 今回の草案発表を受けて、日系大手の通信系ITベンダーの幹部層は、「規制が緩和されるのであれば歓迎」との反応を示している。ユーザーとの直接契約で通信サービスを提供できない外資は、法人向けSIサービスや、地場企業との提携のもとでデータセンター(DC)サービスを展開して収益をあげているが、MVNOライセンスを取得できれば提案の幅が広がり、自社の付加価値を高められる。例えば、今後の需要拡大が確実な製造業向けIoTでは、センサやクラウド、データ分析にモバイル通信サービスを組み合わせ、エンドツーエンドのソリューションを提供できる。日系の通信系ITベンダーの幹部は、「IoTを展開するうえでMVNOは欠かせないポーションだ」と期待する。

 一方で、「本当にライセンスを取得できるかはわからない」との声も多い。今回の草案で明記しているのは、あくまでライセンス“申請”の容認。認可される保証はない。中国でコンサルティング事業を手がける日系ITベンダーの総経理は、「WTO(世界貿易機関)協定に対応するために便宜上、外資を盛り込んだだけで、実際には、業務許可を取得することはできないのではないか」とみる。

 また、草案ではライセンスの申請にあたって「中国電信条例」「外商投資電信企業管理規定」「電信業務経営許可管理弁法」などの関連規定に従う必要があると記載。これに従えば、外資の出資比率が過半数の企業は申請の対象から外れる。独資では難しく、地場企業との提携は欠かせない。さらに、条件を満たしていても、取得は容易でない可能性がある。実際、外資の合弁企業が中国の経営性ICP(Internet Content Provider)ライセンスを取得した例は少ない。

 MVNO制度の枠組みが確定し、本格的な運用が始まるのはこれから。「あらゆる企業を同一に扱う」という中国政府の姿勢が本物で、外資がライセンスを取得できるかが今後の焦点だ。