Windows 7の延長サポート終了(EOS:End of Support)が、2020年1月に予定されている。Windows XPのEOSでは、PCの手配が間に合わないほどのリプレース特需が発生した。その時に移行先となったOSが、Windows 7。つまり、Windows 7のEOSは、Windows XPと同様の特需を生む可能性がある。新しいPCが大量に導入されるとなれば、古いPCが大量に中古市場へと流れていく。気になるのは、PC内に保存されていた機密情報のゆくえである。(畔上文昭)

適正消去の証明書を発行

 コンピュータソフトウェア協会(CSAJ、荻原紀男会長)は2月28日、「データ適正消去実行証明協議会」(ADEC)を設立した。ADECの活動内容は主に二つ。一つは、下取りに出したPC内のデータが適正に消去されるようにすること。もう一つは、PCの再利用を促進することにより、健全で安心安全な循環型IT社会の実現への寄与である。ADECの会長は、CSAJの荻原会長が務める。
 
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左からADECの消去技術認証基準委員会の加藤貴委員長(ワンビ社長)、
ADECの荻原紀男会長(CSAJ会長)、CSAJの笹岡賢二郎専務理事

 CSAJがADECを設立するに至った背景について、荻原会長は次のように説明する。「データ適正消去の証明書発行は、1社単独ではできない。団体をつくるにしても、事務局がしっかりしていないと長続きしない。CSAJではデータ消去のソフトウェアを提供する会社が会員となっているため、組織化しやすいと考えた」。

 ADECはデータ消去ソフトウェアの基準を定め、その基準にソフトウェアが合致しているかの審査などを行う。CSAJは、データ適正消去実行証明書の発行を担うほか、証明書を発行するためのシステムを運営する。まずは、4月に証明書発行の実証実験を開始し、6月末には実運用を開始する予定である。
 
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データ消去は1回で十分

 CSAJがADEC設立に動くきっかけをつくったのは、遠隔データ消去などのセキュリティ製品を提供するワンビの加藤貴社長。ADECでは、消去技術認証基準委員会の委員長を務める。

 「中古PCやリースPCに復元可能なデータが残っていると、情報漏えいにつながってしまう。実際、そういった事故は発生している。ユーザーからPCを引き取る業者は、データ消去の証明書を渡すというのが一般的だが、これは業者自身が発行する自己証明書に過ぎない。データを消去せずに、証明書を発行するというケースもある」ことから、加藤委員長は信用できる第三者が発行する証明書が必要だと考えた。

 データ消去は、無意味なデータを上書きするかたちで実施されるが、ハードディスクが大容量化したことで、作業に時間がかかるようになった。しかも、「どこから出たのか、データ消去の作業は3回上書きしなければならないとか、10回必要とかいわれることがある」と、加藤委員長。実際は1回で十分とのこと。「3回なら半日の作業になってしまうが、1回なら1時間ほどで完了する。そういったことも、ADECでは啓もうしていきたい」。短時間の作業ですむとなれば、データ消去を実行せずに証明書を発行するという悪質な行為は減ると期待される。

 国内には登録されているだけでも、PCの引き取りを実施している事業者(データ消去事業者)は約300社あり、未登録の事業者も多数存在するとみられている。データ消去事業者は、これまで自社で証明書を発行してきたが、CSAJによって第三者による証明書を得られるようになる。

 データ消去事業者にとっては、新たなビジネスチャンスにもなる。証明書はADECの直販価格が1台につき2000円だが、オープン価格として代理販売が可能となっているからだ。法人向けには、ボリュームディスカウントも設定されている。ただし、データ消去事業者は、ADECの会員になり、消去プロセスの認証を得る必要がある。入会金は25万円を予定しているが、初年度は無料とする方針。年会費は25万円である。

健全な循環型IT社会へ

 データ消去に不安がある場合、ユーザーはPCの破壊を選択してきた。ハードディスクを物理的に破壊してしまえば、データの復元は基本的にできない。ただし、それではPCを再利用できなくなってしまう。

 「ADECの最大の目的は、『健全で安心安全な循環型IT社会の実現』にある。適正なデータ消去によるPCの再利用によって、循環型IT社会を実現していきたい」と、CSAJの笹岡賢二郎専務理事はADECの役割の重要性を説明する。ちなみに、日本国内で使用されているPCは、漢字などを扱うために2バイト仕様になっており、多少古くなっても1バイト環境であれば十分に活用できるとのこと。海外では、日本の中古PCが人気だという。

 Windows 7の延長サポートが終了する20年1月に向け、多くのPCが中古市場に出回るようになると予想される。PCを納品するSIerや販売会社は、PCの引き取りを行わないとしても、ユーザーを守るためにデータ適正消去証明書の存在を知っておくべきだろう。