国内エンタープライズ向けストレージ市場では、オールフラッシュが目覚ましい成長を遂げている。オールフラッシュ専業ベンダーの米ピュア・ストレージも好調で、2017年度は09年の設立以来、初めて10億ドルの売り上げを達成した。ピュア・ストレージが次に取り組むのが、AIの領域だ。NVIDIAと協業し、業界で初めてAIに最適な統合インフラストラクチャをリリース。AIの領域に進むきっかけとなったのが、同社が強みとする予測分析サービスだ。(山下彰子)

急成長したピュア・ストレージ
予測分析が強みとなる

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米・ピュア・ストレージ
ロバート・リー
チーフ・アーキテクト兼
バイス・プレジデント

 米・ピュア・ストレージの17年度は好調だった。3月に来日したロバート・リー・チーフ・アーキテクト兼バイス・プレジデント(VP)は、「創業してから初めて売り上げが10億ドルを達成した。ここまで短期間で達成できたIT企業はほかにないだろう」と述べ、好調ぶりをアピールした。

 ピュア・ストレージの成長をけん引しているのが「前年同期比で48%成長」したオールフラッシュストレージだ。速度が速く、効率がよく、また省エネ性能が高いオールフラッシュを選ぶユーザーは増えている。とはいえ、オールフラッシュをリリースしているベンダーはほかにもある。ピュア・ストレージが選ばれた要因は独自のテクノロジーがあるからだという。

 ピュア・ストレージが掲げるアーキテクチャデザインの理念は、シンプルであることだ。リーVPは、「ストレージだけではなく、エンタープライズ向けの製品は管理が非常に複雑だ」と話す。それに対し、シンプルにすることができた要因として、「起業メンバー、開発者の多くはコンシューマ向け市場の経験をもっている。そのエッセンスを加え、設定や運用・管理、増設をシンプルにしたのがピュア・ストレージの特徴だ。これにより製品単体をシンプルに使うことができる」という。

 次のステップが、大型導入時の複数の機器の管理・運用のシンプル化だ。そこで同社が取り入れたのがIoTとAIのテクノロジーだ。

 フラッシュストレージをIoTエッジに見立て、パフォーマンス情報や統計情報などを収集し、送信する仕組みを備えた。収集したデータをもとにワークロードの使われ方のパターンなどを把握、分析し、製品のアップグレードや改良につなげてきた。さらに、サポートにも生かしている。具体的なものが昨年の夏に発表したAIプラットフォーム「Pure1 META」だ。インストールベースから送信される遠隔測定データを継続的にスキャンし、機械学習を利用した予測型分析により潜在的な問題を事前に解決できる。こうしたデータは同社のセールスだけではなく、パートナーとも共有している。「これにより不具合や障害がおこる前に、約7割は事前に把握でき、3件中2件は顧客が不具合や故障に気がつく前にメンテナンスを実行できている」とリーVPは語る。予測分析により、顧客のビジネスオペレーションを止めることなく、ビジネスを継続できる体制を提供できることが、顧客満足度につながっているという。

顧客ニーズから誕生したコラボ
ストレージとGPUが重要なポイント

 ピュア・ストレージの強みである予測分析は、フラッシュストレージからデータを集め、ビッグデータとして集約、AIを使って分析し、故障や不具合が発生するタイミングを予測している。ビッグデータをAIで分析するノウハウは、同社がAIに最適化したインフラの開発に生きてくる。
 
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米・ピュア・ストレージ
マット・キックスモーラー
製品・ソリューション
マーケティング部門 副社長

 企業は大量のデータをストレージに収納し、それをいかに活用するかに頭を悩ませている。その際、俎上に載せる項目の多くが「GPU、CPUの処理性能やアプリケーション、AIだ。だが、本当に重要なエッセンスはストレージ。ストレージからデータを適切に、適時アプリケーションに送ることができなければ、アプリケーションを使って分析することもできない」とリーVPは強調する。ストレージベンダーならではの発想だが、見落としがちだった着眼点であることは確かだ。実際、AIを活用するため、データをすばやく取り出せるオールフラッシュを採用するケースが増えている。

 分析には処理性能も重要で、「GPUを強化したハードウェアを採用する企業が多い」とリーVPは語る。最近顕著なのが、「オールフラッシュストレージ『FlashBlade』とNVIDIAの『DGX-1』を採用し組み合わせる」(マット・キックスモーラー・製品・ソリューションマーケティング部門 副社長)ケースだという。「FlashBlade」と「DGX-1」を組み合わせた製品、それがAIに最適な統合インフラストラクチャ「AIRI(アイリ)」だ。

統合インフラ製品により
企業のAI活用をサポート

 AIの導入には、既存のパーツ、オープンソースの製品を自前で組み合わせてインフラを構築する必要がある。しかし、キックスモーラー副社長は、「AIは迅速に判断し、ものごとを進めるための手段。そのAIのインフラが複雑で、構築に時間がかかると、AIを活用して実績を出すまでに遅れが生じてしまう」と注意を促す。AIを迅速に導入するために必要なハードウェア、ストレージ、ソフトウェアを兼ね備えて誕生したのが「AIRI」だ。

 AIRIの大きな特徴は、コンピュートとストレージがそれぞれ独立し、必要に応じて拡張できる点。そして、高効率である点だ。DGX-1は40ラック分のCPU性能を、「FlashBlade」は10ラック分のディスク性能を備えており、AIRIは、50インチ未満のサイズで50ラック分の性能を提供できる。データセンターの消費電力、設置スペースを大幅に削減することができるわけだ。

 キックスモーラー副社長は強調する。「AIは今後、あらゆる業界に変革をもたらすだろう。米ガートナーは、20年までに80%の企業がAIプロジェクトを立ち上げるだろうと予測し、日本の調査でもすでに50%以上の企業がAIプロジェクトを推進、あるいは実践していると発表している。日本が強みをもっている業界、例えば自動車、製造業、金融サービス、医療などは、AIによって大きな変革が起きると見込まれている。日本がAIの世界でリーダーとなるチャンスは非常に大きい」。ストレージの予測分析のノウハウから誕生したAIRIにより、日本のAI市場に切り込んでいく。