アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、マイクロソフト製品のAWS上での稼働を促進すべく、パートナープログラムをアップデートした。いうまでもなく、AWSとMicrosoft AzureはパブリッククラウドのIaaS/PaaS領域では2強といえる存在。マイクロソフトは自社の広大な製品ポートフォリオを強みとして打ち出すとともに、製品開発・リリースを“クラウドファースト”に全面的にシフトし、クラウドネイティブで開発した機能をオンプレミス製品に先駆けてAzureに実装している。そんななかでAWSが敢えてマイクロソフトユーザーの取り込みに本腰を据える意図とは何か。基幹系を含むエンタープライズシステムへのAWS活用ニーズを成長のエンジンにしていくという強い意志がにじむ。(本多和幸)

EC2 for Windows Serverを認定対象に

 
今野芳弘
パートナーアライアンス本部
本部長
 まずは、AWSのパートナープログラムである「APN(AWS Partner Network)」の基本的な仕組みをおさらいする。APNは基本的にはパートナーの認定プログラムであり、APNパートナーは大きく「コンサルティングパートナー」と「テクノロジーパートナー」の二つに分かれる。コンサルティングパートナーはSIerやコンサルファーム、VARなどが対象。テクノロジーパートナーはISVが主な対象だ。パートナーの技術力に応じてレベル分けされていて、コンサルティングパートナーは「プレミア」「アドバンスド」「スタンダード」の三つ。テクノロジーパートナーは「アドバンスド」「スタンダード」の二つのカテゴリがある。また、コンサルティングパートナー、テクノロジーパートナーとも、ウェブ登録だけで参加でき、パートナー予備軍といえる「レジスタード」という階層も用意していて、新規パートナー獲得のための間口は広い。

 アマゾン ウェブ サービス ジャパンの今野芳弘・パートナーアライアンス本部本部長は、「認定要件は厳しく、お客様のクラウド活用をさまざまなフェーズでしっかりサポートできるパートナーを認定している」と話す。それでも、今年5月の時点でコンサルティングパートナーは223社、テクノロジーパートナーは315社に達し、APNパートナー全体としては、昨年比で130社増えているという。「IoTやAI、デバイスなどの領域にパートナー網が広がっているし、いままでクラウドに興味がなかったプレイヤーの方々が、クラウドのパートナービジネスに参加しないといけないという危機感をようやく本気で持ち始めている。地方のパートナーも徐々に増えており、今年はパートナー網の拡大が一層加速する」というのが今野本部長の見立てだ。

 APNパートナーとしての認定にあたって、AWSがパートナーを認定する評価軸については、三つのプログラムを用意している。一つは、SAP製品のクラウド提供、ビッグデータ活用ソリューション、各種のクラウドマイグレーションなど、AWSを活用したニーズの高いソリューションを提供する能力を認定する「コンピテンシープログラム」。二つめは、「Aurora」や「Redshift」など特定のAWSのサービスを活用する能力を認定する「サービスデリバリープログラム」。そして三つめが、クラウドの運用能力を認定する「MSPプログラム」だ。

 今回、AWSが拡張したのは二つめのサービスデリバリープログラムだ。このプログラムの対象となるAWSのサービスに、「Amazon EC2 for Windows Server」を追加したのだ。ちなみに国内では、富士ソフト、日本ビジネスシステムズの2社が、すでにAmazon EC2 for Windows Serverについてサービスデリバリープログラムの認定を取得している。AWS、Windows Serverの両方について、ハイレベルなノウハウ、知見と導入実績が求められる認定基準をクリアした2社だという。
 

“質”を担保したパートナーを着実に増やす


 AWSの最新のパートナー戦略について今野本部長は、「パートナーのケイパビリティ(能力)をしっかり認定して、お客様がAWSの導入ベンダーを選定しやすくするとともに、パートナーにとっては自社の強みを核としてビジネスを拡大できるよう支援していく。さらにパートナーエコシステム全体としてエンタープライズシステムへの対応能力を向上させることに注力しており、当社としても専任のリソースを割いてパートナーのトレーニング支援や案件創出、事例化支援をしている」と説明。そのうえで、「エンタープライズシステムへの対応という観点では、SAPのAWS上での運用などはもちろん、導入済みのマイクロソフト製品をAWSで動かしたいという要望が近年非常に増えている。企業で導入されているアプリケーションの70%がWindows Serverで稼働しており、すでにAWS上でWindows Serverを稼働、安定運用している事例もたくさんある。マイクロソフトのワークロード稼働先として、AWSが最適であることを市場にアピールしていきたい」と強調する。

 一方で、マイクロソフト製品をクラウドで利用するとなれば、Azureが第一の選択肢になるユーザーも多いと推測されるが、これに対しては、「長年の安全稼働や運用実績、最小構成からエンタープライズ、DR構成まで幅広く対応できることは、AWSの絶対的な強みであるし、コストメリットやパフォーマンスもトップの水準だと自負している。そして何よりも、経験豊富なパートナーを揃えたエコシステムでお客様のプロジェクトの成功を支援できることが差異化要因となる」としている。また富士ソフトや日本ビジネスシステムズは、Windows Server 2008の保守期間が2020年に終了することで、保守切れのOSをAWSに移行したいというニーズも膨らむとみており、その支援サービスにも力を入れる方針を示している。

 アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、Amazon EC2 for Windows Serverのサービスデリバリープログラム認定パートナーの拡大に注力し、“質”を担保したSIパートナーを着実に増やすことで、マイクロソフト製品ユーザーをAWSに取り込んでいくことは十分に可能だと考えている。一方で、マイクロソフト製品をベースとして開発されたISVパッケージのクラウド化ニーズなども重視しており、ISVにも「Microsoft on AWS」のパートナーエコシステムを本格的に広げていくという。AWSとAzureの競争はさらに激しさを増しそうだ。