日本マイクロソフト(平野拓也社長)がパートナー支援の体制を大きく変更してから1年が経過した。パブリッククラウド市場でトップベンダーのアマゾン ウェブ サービス(AWS)を追撃するためにも、パートナーエコシステムのさらなる活性化は最重要課題といっていい。日本マイクロソフトがこの1年間の成果をどう評価し、次の手を打つのか。(本多和幸)

Azureの年間契約額は前年度比350%

高橋美波
執行役員常務
パートナー事業本部長
 日本マイクロソフトは昨年7月、8部門に分かれていたパートナー支援機能をパートナー事業本部に集約した。その結果、パートナー事業本部が支援するパートナーの総数は約1万社という規模になった。ただし、全方位的な支援では成果を出すのは難しいとの判断から、まずは新たなエコシステムの基盤づくりを進めるべく、重点的に協業するパートナーを500社に絞り、「Microsoft Azure」を活用した産業別ソリューションの開発やマーケティング、プロモーション、顧客への提案活動などで密接な協業に取り組んできた。

 こうした活動の成果について日本マイクロソフトの高橋美波・執行役員常務パートナー事業本部長は、次のように語る。「2018年6月期の実績には大きな手応えがある。Azureの年間契約額は前年度比350%と大きく成長し、マイクロソフトのクラウド製品を再販できるCSP(クラウド・ソリューション・プロバイダー)リセラーは約2200社にまで増加した。パートナーによって新規に公開されたクラウドベースのビジネスアプリケーションは865で、そのうちAzure関連は553。協業によって受注したAzureベースのビジネスアプリケーションの受注案件数は400以上に達した。さらに、AI、IoTなどの新たな領域でも、53の新たなソリューションが日本マイクロソフトのパートナーエコシステムから生まれた。日本マイクロソフトとパートナーの協業だけでなく、パートナー同士が連携する例も多くみられるようになったことが、パートナーエコシステムの成長を加速させている」。
 

業種特化でシェアを伸ばし「AWSとの差は縮まった」

 一方で、これだけでは、トップを走るAWSとの差は縮まったのかが、なかなかみえてこない。これについて高橋常務は、「彼らも成長しているが、相対的には縮まっている」と断言する。とくに、地銀を中心に金融分野では大きく伸び、「われわれが依然としてチャレンジャーであることに変わりはないが、業種特化では今後も大きくシェアを伸ばしていけるセグメントが少なくないと考えている。仮想サーバーだけといった単機能の切り口での比較は難しいが、クラウドへのマイグレーションが進む領域でシェアを伸ばすことに注力していきたい」と説明する。

 日本マイクロソフトのパートナーエコシステムは規模の面での成長のアピールが目立つが、ライバルであるAWSのパートナープログラム「APN(AWS Partner Network)」は認定制度が根幹を支えており、SIerやVAR、ISVはともに、厳しい認定要件をクリアする必要がある。AWSには、パートナーの能力を可視化し、ユーザーが適切な導入ベンダーを選択して成果を得られやすくするという意図がある。高橋常務は、日本マイクロソフトが同様の取り組みを始める可能性にも言及。詳細については現時点では明言できないとしながらも、「パートナーのケイパビリティの可視化は何らかのかたちで実現していきたい。この9月には方向性を発表する」と説明した。
 

アクティブなCSPは4割程度という課題

 同社はこの1年間と同様、今後も1万社のパートナーから毎年約500社の重点パートナーを選定し、密接な協業を継続する方針だが、パートナーの「ケイパビリティ可視化」もこれと連動した施策になるという。奇しくもAPNパートナーは今年5月の時点で538社であり、日本マイクロソフトが重点パートナーを500社選定し、認定制度のようなものと紐づけて協業を進めていくとすれば、APNパートナーと同規模の「ケイパビリティ可視化」パートナーを早急に揃えようとしているようにもみえる。

 ただし、高橋常務は、「AWSを意識した設定ではない」と明確に否定する。「パートナーに対して間口を広くしておくという基本方針は変わらないが、われわれは(AWSのパートナー制度と比べても)より限定した、深い協業をやろうとしている。一方で、その枠に入らなかったパートナーを放置するわけではなく、デジタルマーケティングなどを活用し、より効率的な協業の仕方に変えていくイメージだ。全てのパートナーとの協業をマネージしていく。より深く協業するパートナーを明確にして、メリハリをきかせる方針だと理解してほしい」とした。

 約2200社まで増加したCSPリセラーも、規模の拡大が目立つが、実際にアクティブなパートナーは4割程度だという。高橋常務は、CSPリセラー網を活性化していくことも大きな課題であることを認める。「当社がCSPに求める年間取引数の基準があって、それを満たしていないパートナーが5割以上いる。今年の第1クォーター中には、取引額を満たしたパートナーを8割くらいまでもっていきたい。アクティブでないCSPとも接点はあるので、情報提供や教育次第で取引数も増えるはず。これまでかなり注力してきて成果も挙げているので、目標達成はみえてきている」と説明する。

 AWS側も、マイクロソフトユーザーを取り込むべくパートナープログラムのアップデートを行っている(週刊BCN1731号2面で既報)。パートナーエコシステムの規模と質を同時に追求する日本マイクロソフトの戦略が、AWSとの差を縮めることにつながるのか、次回の「通信簿」に注目したい。