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弥生とオリックスが共同で設立したアルトア FinTech×業務アプリの新市場をけん引するか オンライン融資を3年で黒字化する計画

2018/09/24 09:00

週刊BCN 2018年09月17日vol.1743掲載

  弥生と親会社のオリックスが共同で設立し、小規模事業者向け小口・短期のオンラインレンディング事業を手がけるアルトアは、融資の申込件数が数百件、融資総額も数億円規模に成長したことを明らかにした。昨年12月にサービスを開始して約9カ月での数字だが、弥生の社長を兼務する岡本浩一郎氏は「希望的観測込みの計画比では到達率は5割くらいで物足りないが、事業としてモノになるという手ごたえは得た」とコメント。3年後の黒字化を想定し、まずは融資残高10億円の早期達成を目指す。

岡本浩一郎
社長
 アルトアは、弥生が持つ財務会計アプリケーションのビッグデータとオリックスの与信ノウハウ、そしてd.a.t.のAI技術を融合させて新しい与信モデルを開発したという。これにより与信の精度を落とさずに時間と労力を飛躍的に削減し、既存の金融機関が商品化しづらかった小口・短期の融資サービスを小規模事業者に提供するというのが事業のコンセプトだ。

 ただし、小規模事業者向けのオンラインレンディングは、クラウド会計の市場で弥生と鎬を削る新興クラウド会計ベンダーであるfreeeやマネーフォワードが先行して取り組んできた領域でもある。ただし、freeeやマネーフォワードは地方銀行などの金融機関と協業し、あくまでも業務アプリケーション側のデータ提供者としてオンラインレンディング事業に参画しているかたちだ。しかし岡本社長は、「他社と比べても、アルトアは弥生の圧倒的な顧客基盤をベースにしたデータを活用できるという強みがあるが、それ以上に、最初から最後まで一貫して自分たちのサービスをつくり上げているところが大きく違う点だ」と話す。独自開発した与信モデルは精度が高く、貸し倒れは現在のところ発生していない。これは当然、同社の大きな武器だが、それ以上に、「基幹システム整備も含めて貸金業としての体制をしっかりつくり、なおかつ実績も着実に積みあがっていることがアルトア独自の存在価値であり、新しい市場をつくっているという実感がある」(岡本社長)のだという。

 岡本社長によれば、ユーザーの反応も上々で、「特にスピード感に対する評価は高く、申し込みがウェブサイトで5分程度で済んでしまうのは異次元の利便性だと言ってもらっている」と話す。まずは認知度向上を優先課題として取り組み融資残高を積み上げる方針だ。さらに、近く独自の与信モデルを使ったシステム提供を金融機関向けに行う計画で、来春以降、本格的にビジネスを立ち上げる計画を明らかにしている。(本多和幸)
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