健康診断のデータをビジネスに応用する動きが活発化している。日立製作所は自社グループの日立健康保険組合が持つ約11万人分の健診データを活用。NECも自社グループ約2万人分の健診データを使った研究成果を生活習慣病などの予防に役立てる。

 協業の動きも出てきている。健康器具メーカーのタニタは、健康診断や人間ドックを手掛ける淳風会(岡山県)などと協業した健康増進サービスを始める。個々人や会社員、地域住民が将来なるであろう病気を予測し、積極的に予防していくことをビジネスにつなげていく。

 日立製作所は、第一生命保険と協業して高血圧や糖尿病、血管疾患など主な生活習慣病の入院リスクを予測するサービスの販売を10月にスタート。主な生活習慣病発症による入院の可能性と入院日数を予測。生命保険会社の保険引き受け基準の妥当性の検証や、多様な保険商品の開発に役立てる。

 NECは年間約3万8000人の健康診断や人間ドックの医療サービスを手掛ける倉敷中央病院と協業して「NEC健診結果予測シミュレーション」を実用化する。同シミュレーションは、過去5年間の健診データを分析し、数年後の健診結果を予測するというもの。体重や腹囲、血圧、糖代謝、脂質代謝など生活習慣病と関わりの深い9種類の検査値をもとに、NECのAI「the WISE(ザワイズ)」を構成する異種混合学習技術を活用した。倉敷中央病院が2019年6月に開設予定の「予防医療プラザ」での実用化を目指す。

 タニタは、10月15日付で総額35億円の第三者割当増資を実施した。うち産業革新機構から新設分割した官民ファンドINCJが約23億円を出資。ほかにも事業パートナーとして日立システムズ、SBI生命保険、淳風会、イトーキの4社が出資メンバーに参加している。
 
タニタの谷田千里社長(中央)と官民ファンドINCJ、事業パートナーら

 タニタと出資会社では、健診データなどを活用したサービスプラットフォームの構築を目標としており、まずはタニタグループが提供する「タニタ健康プログラム」に参加しているユーザーの体組成や運動、食事データ約80万人分、淳風会が持つ健診データなどを、産学連携の「東京大学COI自分で守る健康社会拠点」が開発した技術で分析。生活習慣病のトリガーとなるメタボリックシンドロームの発祥リスクを予測し、生活習慣の改善を促進する取り組みから始める予定だ。

 ここにきて、健診データの活用が急ピッチで進む背景には、AI技術の進展によって日々蓄積されるデータ分析が容易になってきたことや、すでに病気になったあとの記録である電子カルテと違い、健診データの活用は受診者の同意を得やすいことが挙げられる。予防医療に役立てれば、膨れあがる医療費の抑制効果が期待できる。その一方で、健診データの活用はまだ始まったばかり。今後、どのように収益モデルを確立していくのかという課題も残る。(安藤章司)