多くの企業では、バックアップや開発環境などで、それぞれ独立したストレージシステムを保有している。これらのサイロ化したストレージを統合するというビジョンを掲げるのが、米Cohesity(コヒシティ)だ。バックアップなどのストレージ市場に破壊的な影響を及ぼす可能性のある製品で、ネットワールドが手を挙げ、いよいよ日本市場向けの提供が始まった。(日高 彰)
ネットワールドが販売するアプライアンス型製品「Cohesity C2000」
元ニュータニックスCTOが率いるSDSが日本上陸
Cohesity
モヒット・アロン
CEO
企業が保有するストレージは、必ずしも高いレベルの性能やSLA(サービス品質保証)が必要なものばかりではなく、実際にはむしろ、バックアップ、開発環境、情報共有用のファイルサーバーなどが多くの容量を占めている。一部のストレージベンダーは、基幹業務システムなどに用いられる前者のストレージを「プライマリストレージ」、その他のストレージを「セカンダリストレージ」と呼んで区別している。
Cohesity創業者のモヒット・アロンCEOは、かつてグーグルでGoogle File Systemの開発を統括し、その後、ニュータニックスの創業メンバーとして同社CTOを務めた人物。セカンダリストレージでは「システムごとのストレージが異なるベンダーによって提供されているため、非効率で、ほとんどのデータは見通しがきかない」という問題があると指摘する。バックアップや開発・テストのためにコピーされたデータが、複数のストレージに分散・重複しており、それらを管理するには別々のコンソールにアクセスする必要がある。
このような問題の解決策として、同社は複数のセカンダリストレージを統合するプラットフォームを提供する。アロンCEOが長年取り組んできたソフトウェア定義型ストレージ(SDS)技術を活用し、ノードの追加だけでスケールアウトが可能で、ノード間をまたいだ重複排除も自動的に行われる仕組みを実現した。ストレージを統合することで、保存領域の利用効率が高まるだけでなく、開発や分析を行う度にデータを複製する必要がなくなり、ユーザーのビジネスにもメリットをもたらすことができるという。
ネットワールド
森田晶一
社長
CohesityのSDSは任意のサーバー上で実行可能で、ハードウェアのベンダーは問わない。いわゆるハイパーコンバージドインフラ(HCI)の形態で動作する製品なので、ノードはストレージ機能と同時に、一定のアプリケーション実行能力も有する。今後はデータ保護に加え、分析などの機能も提供していく予定だ。
販売戦略に関して、アロンCEOは「一度に全ての機能を使ってもらう必要はない」と説明する。当初は多彩な機能を訴求するのではなく、多くの企業で容量不足が課題となっている、バックアップ用途に絞って提案していく方針。VeritasやCommvaultといった、ユーザーが現在使用しているバックアップソフトを残したまま、まずはそれらのデータ格納領域として、Cohesityを搭載したストレージ製品を使ってもらえばいいというスタンスだ。
しかし海外では、Cohesityユーザーの9割がバックアップ以外の目的にも同社製品を活用しているといい、バックアップ用途で入り込み、段階的に企業内のセカンダリストレージを置き換えていくという戦略は奏功しているようだ。日本国内ではソフトバンクが第一号のユーザーとなっており、同社は今年、傘下のビジョン・ファンドを通じてCohesityに約280億円を出資している。
国内一次代理店となったネットワールドの森田晶一社長は、「Cohesityを知って以来、ぜひ日本におけるマーケティングを担当させてほしいとお願いしていた」と述べ、セカンダリストレージの統合というコンセプトに強く賛同していることを強調する。
ネットワールドが取り扱っている既存のストレージやバックアップ製品の需要を奪うことにもなりかねない製品だが、「Cohesityが全てのニーズに適合するわけではない」(森田社長)とし、当面大きな影響はないとの見方を示す。しかし近年のITインフラ市場では、サーバー+SANストレージの構成からHCIへの移行が看過できない勢いで進んだ。森田社長は「ストレージでも同じことは起き得る」とも話しており、セカンダリストレージの市場が大きく塗り替えられる可能性を示唆した。