富士通(田中達也社長)は主要子会社の吸収・統合も視野にグループ内のリソース最適化を進める。週刊BCNの取材に対して田中社長が明らかにした。近年進めてきたSI子会社の吸収合併にとどまらず、さらに大きな構造改革を推し進め、収益体質の改善を断行したいという思いがにじむ。(本多和幸)
富士通
田中達也社長
富士通は今年10月、グループのガバナンス強化策の一環として、主要子会社である富士通マーケティング、富士通エフ・アイ・ピー、富士通ネットワークソリューションズについて、2019年1月1日付で新社長が就任すること、さらには新社長を本社役員が兼務することを発表した。
先端テクノロジーの研究開発を担う富士通研究所こそこれまでも佐々木繁社長が富士通本体のCTOを兼務してきたが、他の子会社で社長が富士通本体の役員を兼務するのは異例。また、新社長の就任は富士通グループの年度はじめである4月1日付が通例だったが、それを待たないのも異例のことだ。
持っているリソースを整理 あるべき姿を考える時期
田中社長はこの人事の背景について、「富士通グループが持っているリソースを整理して、あるべき姿を考える時期にきている。しかし、グループ会社のトップに任命された人間は、どうしても自分の組織を中心に物事を考えてしまうもの。そこで、富士通本体の事業の責任を持っている役員が兼務することで、全社視点でグループ会社の事業を見てもらうことにした。場合によっては本体との統合というかたちも視野に、スピード感を持ってグループのリソースをもっとシンプルに再統合して、強みをはっきりさせていく」と説明する。
従来のグループの体制については、富士通のビジネス環境に合わなくなってきたという課題感も持ち合わせているという。「グループ会社がそれぞれ特徴を出しながら、富士通グループ全体としてさまざまな方法で市場にアプローチをしていくのがいい時期もあったし、実際に日本市場では受け入れられてきた。しかし、これは各種ハードウェアのメーカーとしての機能をはじめ、富士通グループが単独で全てを手掛ける垂直統合モデルが成立していればこそ有効だった」と田中社長は話す。
富士通は近年、コモディティー事業の整理を進めてきたが、計画通りには結果を出せていない。今年10月、第2四半期決算発表に合わせて経営方針の進捗状況を説明した田中社長は、当初掲げていた「在任期間中の営業利益率10%以上、海外売上比率50%以上」という目標を撤回し、現在の本業といえるテクノロジーソリューション事業に限定して、営業利益率を2022年までに10%に乗せるという新たな目標を掲げた。
テクノロジーソリューション事業は、ソリューション/SI、保守やアウトソーシングなどのインフラサービス、サーバーやストレージなどインフラ・プラットフォーム製品類のシステムプロダクト、携帯電話基地局などのネットワークプロダクトという四つの領域で構成されるが、営業利益率は今年度通期で4%、19年度5%と計画。一歩後退したようにみえる新目標も、達成できるかどうかは予断を許さない状況だ。
強みを持つベンダーとの「共創」で成長目指す
子会社の新社長人事は、そうした田中社長の危機感の表れともいえそうだ。田中社長のコメントにもあるように、もはや富士通は全てを自社で賄う垂直統合のビジネスモデルではない。パブリッククラウドが典型だが、富士通にない強みを持つベンダーと「共創」し、自社の強みと組み合わせて成長を目指すのが基本方針だ。そしてこの共創を機能させ、高付加価値かつ収益性の高い事業構造を作り上げるには、富士通グループ全体のポテンシャルを早期かつ的確に把握する必要があり、組織のかたちももっとシンプルでなければならないということのようだ。主要子会社が本体との統合に向かう可能性は高い。