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情報の洪水に飲み込まれた人へ 今回のre:Inventはここがポイント

2018/12/29 13:00

週刊BCN 2018年12月24日vol.1757掲載

 AWS re:Invent 2018では、ジャシーCEOの基調講演だけでも20の新発表があり、情報を整理するも一苦労だ。ここは、AWSのキーマンにポイントを解説してもらおう。米AWSでエンタープライズサービスマーケティング担当ゼネラルマネージャーの要職に就いているイーロン・ケリー氏が週刊BCNの単独インタビューに答えてくれた。

 

プラットフォームの幅の広さとイノベーションのスピードに自信

――例年通りではありますが、膨大な数の新発表がありました。私自身、情報の整理に苦労しているのですが、ポイントを解説していただけますか。

ケリー
 まずご理解いただきたいのは、AWSのプラットフォームの幅の広さとイノベーションのペースの速さです。今回のさまざまな発表を一つ一つ全てカバーするのは確かに難しいでしょう。ただ多くの方に認識してほしいのは、AWSのサービスを使えば、妥協することなく自分のやりたいことができるということです。そのためのサービスの幅の広さと深さがあるということなんです。

 機械学習・AIの分野には、資金的にも人的にも特に大きな投資をしています。市場に注目されている技術ですし、ニーズも大きく伸びているからです。AWSの機械学習・AI関連サービスは、「使いやすさ」と「可用性」を重視しています。デベロッパーやデータサイエンティストの皆さんはいろいろな技術を必要としていると思いますが、一つ一つが非常にパワフルなAWSのサービスを簡単に使えるようにしたというのが、今回のre:Inventで発信した主要なメッセージの一つだと言えます。

――特に注目すべき新発表を挙げてください。

ケリー
 AWSのもう一つの大きな投資領域として、コンピュートの部分があります。今回、なんといってもARMベースのプロセッサー「AWS Graviton」を独自開発し、これを搭載した「Amazon EC2 A1インスタンス」を発表したのは大きなトピックです。Annapurna Labsを買収したことで、AWSのサービスに最適化したプロセッサーを独自に開発できるようになったのは大きな強みです。

 もちろん、インテルやエヌビディアとの密接な協業も継続していて、「Amazon EC2 P3dn インスタンス」という機械学習向けでは現時点で最強のGPUインスタンスや、100Gbpsのネットワーク帯域に対応するコンピューティング集約型の「Amazon EC2 C5nインスタンス」も披露しました。コンピュートの部分のパフォーマンスを飛躍的に上げることができるのもAWSが持つ大きな力だと思っています。

 また、AWSのインフラをお客様のデータセンターにも展開していく「AWS Outposts」の発表もありましたね。これも大きな目玉の一つです。
 

Outpostsの開発にあたっては他社競合サービスを徹底研究

――Outpostsのようなハードウェア設置型のクラウドサービスは、パブリッククラウドの可能性を追求してきたAWSにとっては必ずしも進化ではないような気もします。ハイブリッドクラウドの現実解を見据えた妥協の産物というわけではないのでしょうか。

ケリー
 AWSはお客様第一主義です。だから、お客様からさまざまなフィードバックをいただいています。今までAWSの環境を使っていて、それなりに使い勝手もよくなったと評価するお客様から、オンプレとクラウドをうまく組み合わせて使っていきたいという声がすごく多かったんです。お客様はレイテンシーにすごく敏感なので、従来のパブリッククラウドのサービスだけでは、エンドカスタマーに提供するサービスのインフラとしては不十分だという声もありました。通信サービスも5Gの世界になっていきます。そのポテンシャルを存分に生かすことも考える必要があり、そのために生まれたのがOutpostsなんです。

 一方で、お客様のデマンド、リクエストに応えるのが大前提ではあるものの、今まで使っていたAWSのサービスと同じように使えなければ、お客様にとっては非常に使いづらいものになってしまう。ですからOutpostsは、従来のAWSのサービスと全く同じ使い勝手で、両者を組み合わせてシームレスに使えるようにしていますし、ソフトウェアの管理だけでなくハードウェアもAWSが一緒に管理するかたちにしています。新しいタイプのインスタンスをお客様がお望みであれば、AWSからそのためのハードウェアを送らせていただき、更新、アップデートをさせていただきます。ハードの運用にお客様が気を使わなくてもいいのは通常のクラウドサービスと同様です。

――「Azure Stack」や「Oracle Cloud at Customer」も、ハードウェア設置型でクラウドサービスを提供していますが、ハイブリッドクラウド基盤の提供ということではAWSが他社に後れを取ったとは思いませんか。

ケリー それは全く思いません。Outpostsは、今までのAWSのサービスと全く同じかたちで、ソフトもハードも包含して使っていただくことができるサービスです。ハードだけ更新の時期が違うとか、違うメンテナンスが必要になるとか、そういうことはお客様にとってメリットがないわけで、Outpostsはソフトもハードもメンテナンスやアップデートのタイミングは同じです。それが他社サービスとの大きな差異だと思っています。

 Outpostsの開発を進めるに当たっては、当然、競合サービスを研究しました。しかし他社サービスは、ハードとソフトで対応にバラつきがありました。それは大きな短所だと、われわれは考えています。

――ということは、OutpostsはAzure Stackのようにサードパーティーのサーバーメーカーと協業するようなビジネスモデルではないということですね。

ケリー そうですね。いろいろなハードウェアのコンポーネントメーカーとお付き合いはしていますが、AWSのインフラに使うハードウェアは基本的に全てAWS自身が設計しています。Outpostsで提供するハードウェアも同様です。AWSのクラウドサービスと全く同じであることがこのサービスの価値でもありますので。
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