KDDI(高橋誠代表取締役)は、IoTインテグレーターのエコモット(入澤拓也代表取締役)と資本提携することで合意した。これまで同社はアイレットやソラコムといったITベンダーを買収しており、その結果、IoT領域における包括的なサポート体制を構築しつつある。今回の提携では、センシング領域のパートナーを手に入れたことでこの体制がより強固となった。法人向けIoTではパートナーと協力した一気通貫のサービスを強みとするKDDIにおいて、エコモットはどのような価値をもたらすのか。(銭 君毅)
KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部長 原田圭悟氏(左)、
エコモット 代表取締役 入澤拓也氏(右)
センサーを含めたワンストップ
KDDIは1月15日、IoTインテグレーション事業を手掛けるエコモットが発行する株式の21.1%を取得。持分法適用関連会社とする形で資本業務提携した。金額は非公開だが、15日付の終値から換算すれば約13億5000万円となる。
エコモットは2007年から、北海道におけるロードヒーターの遠隔監視事業を手掛けてきたIoTインテグレーター。現在は建設現場の情報化サービス、交通事故削減ソリューションなどのIoTパッケージサービスを提供している。また、2000種類以上のセンサーデバイスに対応するIoTプラットフォーム「FASTIO」をKDDIと共同で提供しており、FASTIOはKDDIのIoTサービス「KDDI IoT クラウド Standard」の基盤になっている。今回の資本提携によりさらなる関係強化を図る。
KDDIは近年、買収や資本提携、合弁会社の設立によって自社のサービス範囲を拡大してきた。今回のエコモットへの出資もその取り組みの一環。エコモットが持つセンシングやIoTインテグレーションのノウハウを共有することになる。KDDIの原田圭悟・ビジネスIoT企画部長は「これまで法人向けIoTでは、プラットフォームならプラットフォーム、データ分析ならデータ分析で個別にサービスを持つベンダーが多かった。IoTを導入したいと考えたとき、ソリューションごとに個別で話を進めなくてはいけないのは手間がかかる。万一、うまくつながらなかった場合、原因の特定にも時間がかかってしまう」と指摘する。その上で「特に、センシングの領域では用途ごとにメーカーが異なるためユーザーに負担がかかっていた。多くのセンサーを接続するノウハウを持つエコモットと協力し、ここを解決していきたい」と意気込む。
原田氏は「われわれにはパートナーとともに、センサーからクラウドまでIoTにおけるあらゆるレイヤーで顧客をサポートできる体制がある。これは他社との大きな差別化」と強調する。これまでのKDDIのパートナー企業はネットワークやデータの蓄積・分析などデジタル上でのソリューションを手掛ける企業が多かった。センシングデバイスを自社開発しているエコモットとの関係強化で、これまで手薄だった現場に近い領域を補完するのが狙いだ。
回線だけでは差別化できず
エコモットは今後、KDDIの持つ販路を活用した既存パッケージの提供範囲拡大、KDDIと共同での新規IoTパッケージの開発を目指す。開発したパッケージはKDDIのサービスポートフォリオに組み込まれていく。入澤代表取締役は「われわれには、開発力はあっても販売力や信用度という意味では他社に及ばないことも多かった。変化のスピードが速いIoTで、KDDIはベストパートナーだ」と語る。
現在のIoT市場では回線だけでは差別化が難しくなってきており、ユーザーのニーズはセキュリティーを考慮したトータルな提供力、クラウドの柔軟性などへと移っている。KDDIはデバイスからクラウドまでを一気通貫してグループ内で構築できることに大きな強みがある。入澤代表取締役は「IoTの一連の流れを一括して構築できるようになったのはありがたい」とした上で、「製造業など、これまでエコモットが対応できなかった分野にも進出していきたい」と今後の意気込みを語った。
現在、NTTドコモは「IoT×5G×SDGsパートナー協創プロジェクト」を開始、ソフトバンクも「IoTパートナープログラム」を立ち上げるなど、法人向けIoT分野ではキャリアによるパートナー戦略が加速している。キャリアによる独立系SIerの系列化がより拡大していく可能性もありそうだ。