DXビジネスを専門とするNRIデジタル(雨宮正和社長)設立から3年が経過した。DXビジネスは既存のSIビジネスと異なる部分が大きく、同社ではDXビジネスに精通した人材を重点的に育成。「この3年間で具体的にどの部分が既存SIビジネスと異なり、どういった進め方が有効なのかを掴むことができた」と、雨宮社長は手応えを感じている。野村総合研究所(NRI)グループは、業界に先駆けてDXビジネスの立ち上げに取り組んでおり、その一環として2016年8月にNRIデジタルを立ち上げた。折しも富士通が来年1月をめどにDX支援を専業とする新会社設立を発表するなど、後追い現象も起きている。

雨宮正和社長

 既存SIと大きく異なる点は、まずデジタルビジネスの仮説を立て、その目論みに向かってビジネスを動かしていくところにある。既存のSIビジネスであれば、要件定義から入っていくことが多いため、SE人材を中心に手堅くプロジェクトを進められる。一方、DXビジネスは目論みの段階からユーザー企業とともに考えていくスタイルが多く、「ビジネスとITの両方が分かる人材」を手厚くすることが欠かせない。NRIデジタルでは、この3年間、NRIグループと密接に連携をとりながらビジネスとITのハイブリッド人材の育成に取り組んできた。

 雨宮社長は、「DXビジネスのキーワードはダイレクト、データ、クラウドの三つ」だと指摘する。DXでは複数ある業務プロセスやサプライチェーンを削減し、いかにエンドユーザーとダイレクトにつながるかがカギを握るという。ダイレクトの割合が高まれば、効率化による粗利の増大やエンドユーザーのデータを集めやすくなる。データ活用による商材開発は売り上げを伸ばす効果が期待でき、これらの変革をクラウド上で進めていくことでコスト削減や時間短縮につなげられる。DXビジネスは、既存ビジネスの延長線上ではなく、「スタートアップ企業の立ち上げに通じるものがある」と話す。

 SIerの収益面から見ると、スタートアップ企業の立ち上げ並みの高いリスクに見合ったリターンを得られる仕組みが必要となる。その手法の一つがユーザー企業との合弁事業だ。NRIグループでは、工作機械メーカーのDMG森精機とDX推進の子会社を昨年1月に設立するなど、NRIデジタルが深くかかわる合弁案件だけでも「複数件が進行中」という。本体から独立したDX子会社としての経営判断の俊敏さを最大限生かしている。同業他社の富士通もこうした専門性やスピードを求めてDX子会社をつくった経緯がある。

 プロジェクトの進め方や収益モデル、人材のスキルセットが既存SIと大きくことなることから、DXビジネスを専門として推進役を担っていくNRIデジタルの役割は一段と重要になっていくものと見られる。(安藤章司)