トヨタグループが11月19日に提供を開始したスマートフォン決済アプリ「TOYOTA Wallet(トヨタウォレット)」に、TIS(桑野徹会長兼社長)のキャッシュレス決済プラットフォーム「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」のデジタルウォレット(財布)サービスが採用された。PAYCIERGEは銀行などの金融業ユーザーでの活用が進んでいたが、今回の非金融系ユーザーの大型案件獲得を機に、成長を加速させたい考えだ。

TISの桑野徹会長兼社長

 TOYOTA Walletは、スマートフォン向けモバイルウォレット用アプリケーションを通じて、先払い(プリペイド)、後払い(クレジット)、即時払い(デビット)の全ての支払方式に対応するとともに、決済方式はタッチ式(非接触)やQR/バーコードを使う。PAYCIERGEのデジタルウォレットサービスはこうした多様な決済手段や決済インターフェースを一つのアプリに統合して、文字通りのデジタルウォレットを実現する。桑野会長兼社長は「プリペイド、クレジット、デビットの決済処理サービスは、技術的にも難しく、参入障壁が高い。この分野で圧倒的に強い決済業務プラットフォームにしていく」と鼻息が荒い。

 PAYCIERGEはSaaS方式をはじめとする“サービス利用型ビジネス”で、TISでは従来の個別のSIビジネスとは収益モデルの異なる戦略事業として先行投資を進めてきた。サービス利用型ビジネスはユーザー数が増えれば増えるほど粗利率が高まるモデル。いかにシェアを伸ばしていくかが重要になる。

 TISの足下のビジネスを見ると、キャッシュレス関連の個別SIの案件が大きく伸びているものの、キャッシュレス決済プラットフォームとしてPAYCIERGEの基盤サービスを活用する事業者は「まだこれから多様な業種に拡大していく段階」(桑野会長兼社長)。今回のトヨタグループの採用は、非金融系のユーザーにもPAYCIERGEの採用が広がったという観点から、同事業の大きな転換点になる可能性もある。

 ライバルとなるサービスは、NTTデータが運営するキャッシュレス決済プラットフォーム「CAFIS(キャフィス)」。1984年から35年にわたって決済基盤サービスを提供しており、近年のキャッシュレスの急速な利用拡大と連動して「オーガニック成長が続いている」(NTTデータの本間洋社長)という。

 折しも、キャッシュレスサービスに参入する事業者が相次いでおり、トヨタに限らず非金融系ユーザーがキャッシュレス決済分野に参入する動きは活発化している。TISはPAYCIERGEのアーキテクチャーの新しさや、最短6カ月でデジタルウォレットサービスを始められる迅速性、モバイル分野への積極的な対応などをアピールし、幅広い業種ユーザーに売り込むことでライバルを追い上げる。(安藤章司)