文部科学省が進める「GIGAスクール構想」で、レノボ・ジャパンとNTTコミュニケーションズ(NTTコム)は3月3日、学習向けPCとクラウド型教育プラットフォーム「まなびポケット」、端末管理ツールをパッケージ化した「GIGAスクールパック」を発表した。PCメーカー各社が、同構想に対応したPCを相次いで発表するなか、高校生以下の教育機関向けPCの世界市場でトップを走るレノボの取り組みは、国内市場でモデルケースの一つになりそうだ。(齋藤秀平)
台数は1人1台で800万台
整備は2023年まで続く
同構想は、昨年末に文科省が発表した。PC端末を「Society 5.0 時代に生きる子どもたちにとって、鉛筆やノートと並ぶマストアイテム」(萩生田光一・文科相のメッセージ)と位置付け、2023年度までに「児童生徒1人1台端末」の実現を目指す。政府は19年度補正予算に整備費用2318億円を計上した。
教育現場でのPCの整備は、18年度から進められてきた。文科省は、5カ年で3人に1台を実現するため、毎年度約1800億円を全国の都道府県と政令市に交付してきた。しかし、19年3月時点の整備台数は約217万台で、5.4人に1台となっている。自治体によって1台当たりの児童生徒数にばらつきがあることも問題視されており、文科省は同構想で整備を加速させる考えだ。
対象となるのは小中高の児童生徒。文科省情報教育・外国語教育課は、1人1台を実現する場合、一学年当たりのPCの整備台数を100万台と試算し、全学年で1200万台が必要とみる。このうち、これまでの取り組みで400万台を整備するため、今後整備する台数は、残りの800万台になる見込み。
政府の補助額は1台当たり4万5000円。都道府県と政令市は、この金額内で調達をする可能性があり、各メーカーは価格を抑えたモデルを投入する必要がある。そのため、メーカーにとっては「薄利多売」(レノボ・ジャパンの安田稔・執行役員副社長)のビジネスを展開することになり、資金力のある規模の大きいメーカーのほうが有利になる可能性がある。
レノボ・ジャパン 安田 稔
執行役員副社長
低価格帯PC市場の実績が強み
新型コロナウイルスの影響は?
英国のフューチャーソース・コンサルティングの調べでは、19年第3四半期の高校生以下の教育機関向けPC市場で、レノボは21.6%のシェアを獲得し、2位に3.1ポイントの差をつけて首位に。18年にはインドで1四半期に150万台超の端末を導入したほか、17年に参入した国内では、大分県や埼玉県で導入実績がある。
他メーカーが続々と同構想に対応する機種を発表していることに対し、レノボの安田副社長は「他のベンダーは最近、構想に対応したPCをリリースしているが、われわれは、日本でも海外でも、低価格帯のPC市場で実績がある。それが一番の違いだ」と説明する。導入台数や金額ベースの目標は「非公表」としたものの、「20年度は200万台のマーケットができると思うので、まずはそこを取りに行く」と自信を見せる。PCは売り切りになるため、それに加えて「保守延長やバッテリの交換をサービスとして実施し、利益を出していきたい」と意気込む。
ただ、新型コロナウイルスの影響が、ビジネスに少なからず影響しているようだ。安田副社長は、PCの供給について「中国が影響を受けたが、生産はだいぶ復旧しており、これからさらに回復していく見込み。グローバルで強力なサプライチェーンがあるため、供給には自信がある」と話す一方、販売に関しては「3月に入ってから新型コロナについての問い合わせがきている。今のところどのような状況になるのか見通しは立っていない」と明かす。
導入から管理までを一気通貫
PCの“文鎮化”を防ぐ
GIGAスクールパックでは、Windows 10搭載の「Lenovo IdeaPad D330」と「Lenovo 300e Chromebook 2nd Gen」の2機種を用意し、導入する学校の環境や調達の条件などによって選べるようにした。さらに、パッケージの価格は4万4990円に設定しており、政府の補助額の範囲内で導入から活用、管理まで実現できるのが特徴だ。
NTTコムスマートエデュケーション推進室の稲田友・担当課長は「導入した端末が使われない状態になる“文鎮化”を防ぎ、レノボと一体になってサポートしていく」と強調。菅原英宗・代表取締役常務取締役は、レノボについて「一緒に組むパートナーとしては最高」と評価する。現時点で「レノボとのプロジェクトをメインに推し進めていく」と語るが、「レノボとしか組まないと決めているわけではない」とも述べ、他のPCメーカーとも協力関係を結ぶ可能性を示唆した。
NTTコミュニケーションズ 菅原英宗
代表取締役常務取締役
【お詫びと訂正】
週刊BCN・3月9日号(Vol.1816)1面トップニュース「レノボとNTTコミュニケーションズ GIGAスクール構想対応のパッケージを発表」の紙面で、レノボ・ジャパン 安田稔・執行役員副社長とNTTコミュニケーションズ 菅原英宗・代表取締役常務取締役の写真キャプションが入れ替わっておりました。正しいキャプションは本記事のとおりです。訂正するとともに、読者の皆様ならびに関係各位にお詫びします。