NECは3月30日、東京の本社ビルで、人工知能(AI)で体の動きを検知する新開発の「姿勢推定技術」を活用したAI楽器「ANDCHESTRA VIOLIN(アンドケストラ ヴァイオリン)」を公開した。実用化に向けて技術を実証することが狙いで、応用分野は今後検討する。
姿勢推定技術は、カメラで撮影した映像に映っている人の関節点から人体の領域を推定し、関節の間の中点と人体領域から姿勢を検出する仕組み。低解像度の映像でも安定的に姿勢を推定するほか、混雑環境でも誤検知を抑制できるという。
アンドケストラ ヴァイオリンは、手の位置に音を割り当て、前に立った人が同じポーズをとると音が鳴る。本社ビルの共創空間「NEC Future Creation Hub」で30日に開かれた体験会では、手を動かしながら曲を演奏するデモを披露した。
同社IMC本部の茂木崇シニアマネージャーは「音楽が苦手だと思っている人をアシストし、楽器を弾けるようにすることで、多くの人に楽しいと感じてもらうプロジェクト」と今回の取り組みについて説明し、「人とAIは戦うものと思われがちだが、コラボレーションすることで、新しいものを生み出すということを知ってもらいたい」と話した。
応用分野については「難易度の高い姿勢が認識できれば、リハビリやゴルフのスイングチェックなどに使える可能性がある」とし、さらに「混雑状況下で急に人が動き出したり、横断歩道で倒れたりといった状態が変化する場面で活用できるかもしれない」と話した。
茂木 崇 シニアマネージャー
体験会ではこのほか、目頭や目尻、瞳など、目の周囲の特徴から視線の方向を推定する「遠隔視線推定技術」を使い、視線の方向で演奏できるAI楽器「ANDCHESTRA TRUMPET(アンドケストラ トランペット)」もお披露目した。
遠隔視線推定技術は、すでに販売を開始している。視線の方向で棚のどこを見ているかを分析し、マーケティングに生かす取り組みが進められている。(齋藤秀平)