学校教育向けソリューションを手掛けるチエル(川居睦社長)は、無線LANの通信を安定・高速化するネットワーク機器「Tbridge(ティーブリッジ)」の販売を強化する。Tbridgeは韓国NOASystemsが開発し、チエルが国内販売元となっているアプライアンス製品。文部科学省が昨年、児童・生徒1人1台のPCとクラウドを活用した学習環境を整備する「GIGAスクール構想」を発表したことを受け、全国の学校で校内LANの整備が加速しているが、Tbridgeを導入することにより、無線LAN使用時に発生しやすい速度低下や切断といった不具合を解消できるという。
前田喜和 取締役
PCやクラウドを利用した授業をめぐっては、授業開始時に教室の全端末が一斉に教材へアクセスしようとした際に、ネットワークの通信速度が著しく低下し、授業をなかなか始められないといった問題が挙げられている。Tbridgeを担当する前田喜和取締役は、このような問題について「インフラの増強によって解決できると思われていることもあるが、無線LANは有線LANと異なり、帯域を太くしただけではスループットが改善しない場合が多い」と指摘する。
電波の状態が刻々と変化する無線LANでは、有線LANでは起こりにくいパケットロス(データの一部消失)が発生しやすい。ごく一部のパケットが消失しただけでも、クラウドへのデータの再送要求が発生するほか、多数の端末が同時に通信を行う環境では、チャネルが空くまでの待機や、電波の干渉による遅延が起きやすい。このため、ネットワークの容量自体には余裕があるにもかかわらず、再送や遅延によって実効速度が大幅に低下していることが多いという。
Tbridgeは、クラウドと端末の間でやりとりされるデータをキャッシュし、パケットロスが発生した場合にはクラウドに代わってパケットを再送するほか、無線LAN環境向けのさまざまな最適化処理を行うことで、通信の速度と安定性を改善する。通信状態の可視化機能も搭載しており、最適化処理のオン/オフによってどれだけ性能が向上するかを定量的に測定することも可能。パケットロスや遅延が多く発生している環境にTbridgeを設置した場合、最大3.5倍の速度改善効果を得られたケースもあるといい、アクセスポイントやWAN回線の増強といった大型の投資を行うことなく授業環境を改善できる。
前田取締役によると、同社では2015年ごろからTbridgeの販売を行っていたが、ここ数年の間にタブレットやPCを先行導入した学校で前出のような問題が明るみになったことに加え、GIGAスクール構想が発表されたことで「昨年12月以降、引き合いが加速度的に増している」という。GIGAスクール構想では、PCなどの情報機器購入に加えて、ネットワーク環境整備も補助金の対象なっている。チエルでは販売パートナーと連携し、全国の教育委員会向けに提案を図っていく考え。(日高 彰)