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JALデジタルエクスペリエンス デジタル駆使して旅行需要を呼び戻す JALとNRIが提携パートナーと「体験」を提供

2020/06/26 09:00

週刊BCN 2020年06月22日vol.1830掲載

 日本航空(JAL)と野村総合研究所(NRI)グループの合弁会社のJALデジタルエクスペリエンス(三須基樹社長)は、デジタルマーケティングの手法を駆使してコロナ禍で大きく後退した旅行需要を呼び戻す。JALグループの強みとする旅行をベースとしつつ、顧客が潜在的に興味を持ちそうな「体験」を、NRIのデータ分析やAI(人工知能)の技術を駆使して探り出す。コロナ禍を経て「旅行を通じて得られる体験は、より貴重なものへと変化している」(中村博之副社長)とし、この変化をいち早く取り込んでいくことで旅行需要の早期回復につなげていく。

三須基樹 社長

 同社は、裕福層向けのマーケティングを手掛ける会社として2019年2月に設立。昨年秋に本格的な事業を立ち上げたが、一連のコロナ禍で旅行需要が大きく後退した。だが、人の移動が大きく制限されたコロナ禍が収束したあとは、その反動で「旅行や体験に対する需要増に弾みがつく」(中村副社長)と見ている。さらに、提携関係にあるホテルやゴルフ、ワイン、リゾート、健康などの企業が提供する体験とマッチングすることで、「体験型サービスを提供するプラットフォームとしての役割を担っていく」考え。

 具体的には、顧客の属性や履歴などから“おそらく興味を持つだろう”という潜在的な需要に焦点を当てる。普段からゴルフをたしなむ顧客にゴルフ関連の提案をするのではなく、ゴルフとは直接関係のないリゾートやワイン、健康といった商品や体験を提案する。何かがきっかけになって顧客自身が思いがけない分野に興味を持つよう誘導する“セレンディピティ・マーケティング”の手法をメインに据える。
 
中村博之 副社長

 直近の提携パートナーは、ホテルやリゾート、健康関連など30社ほどだが、早い段階で倍増させていく。「提携先が多ければ多いほど提案できる体験の幅が広がる」(中村副社長)とし、顧客が実際にそのサービスを購入したら、プラットフォームの利用手数料というかたちで収入を得ていく。

 JALグループは個人向けマーケティングは得意だが、企業同士を結びつけたり、企業間で新しいビジネスを構築する領域は「NRIグループのほうが経験豊富な人材多い」(三須社長)。NRI本体はデジタルマーケティングの技術的基盤を強みとし、同じくJALデジタルエクスペリエンスに出資しているNRIグループのブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパンは、ロイヤリティ・マーケティングを強みとしている。各社が持つ人材スキルを融合させることで、コロナ禍を経て大きく変容する生活様式や価値観にマッチした体験型サービスの提案に力を入れていく。

 JALとNRIは、たまったマイルで国内のどこかに行くことができる「どこかにマイル」を16年に共同開発した実績がある。今回はこれとは別にJALデジタルエクスペリエンスが裕福層向けの会員組織「CLASS EXPLORER(クラス・エクスプローラー)」を立ち上げて、提携パートナーとともにセレンディピティ・マーケティングを展開する。(安藤章司)
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