スマートフォンアプリのマーケティングや決済サービスなどを柱に成長してきたメタップス(山崎祐一郎社長)が、SaaSマネジメントツールの拡販に本腰を入れる。新型コロナ禍によるリモートワークの急増などを受けSaaSのニーズは一段と高まっている。こうした背景から、IDaaSとSaaSの運用管理を組み合わせた独自商材「メタップスクラウド」により新たな成長市場が開拓できると見ている。今夏には代理店販売制度を正式にスタートさせ、ビジネス拡大のためのパートナーエコシステム構築にも踏み出す。(本多和幸)
山崎祐一郎 社長
メタップスは2020年8月に新たな中期経営計画を策定・公表した。この中で、マーケティングとファイナンスに続く第三の経営の柱として、法人顧客のデジタル化やデジタルトランスフォーメーションの基盤を提供する「DX支援事業」への投資を本格化し、25年までに同事業で10億円の営業利益を上げるという方針を打ち出した。メタップスクラウドはこのDX支援事業の中核となる商材で、SaaSの利用状況やコストを分析・管理する機能と、アカウント管理、認証管理の機能を備える。
山崎社長はメタップスクラウドが競合として意識する商材として、新型コロナ禍中で一気にプレゼンスを高めた感のあるIDaaSベンダー各社の製品を挙げるが、独自の付加価値を備えた商材であることも強調する。「OktaやHENNGEなどのIDaaS製品が注目を集めているが、メタップスクラウドはIDaaSとしての機能に加えて一つのダッシュボードで社内のSaaSを一元管理できる機能も備えている。ここから組織や従業員ごとに各SaaSのログイン状況やコストなどを把握でき、入退社に伴うアカウントの追加や削除もできる」。
同社はSaaSの運用管理者500人を対象に、業務上の課題を抽出すべくリサーチも行っている。その結果、SaaSを導入している企業のうち5割以上がIDaaSやシングルサインオン(SSO)ソリューションを導入しているものの、「従業員へのパスワードの再発行といったパスワード管理業務に費やす時間は減っていない状況が浮き彫りになっており、SaaSの利用が拡大するにつれSaaS管理ツールの必要性も高まっている」という。メタップスクラウドも、SaaS管理ツールとしての導入を検討している企業からの問い合わせが多く、「最終的にはIDaaSと一体で提供されることの価値を評価していただくケースが多い」と山崎社長は説明する。
メタップスクラウドは現在、応募があった企業に対してβ版を提供しており、ユーザーからのフィードバックを基にブラッシュアップを重ねている。今年3月には基本機能を備えた製品を正式にリリースする予定。今夏にはさらに機能を追加し、このタイミングで代理店販売制度などのパートナープログラムもローンチする。パートナー候補のITベンダーからも問い合わせは多く、パートナープログラムの設計を既に開始しているという。
一方で、有力なSaaSとの連携を早急に拡大しなければならないという課題もある。グローバルでIDaaS市場のリーダーと目されるOktaは、6500以上の製品・サービスと連携済みであることを大きな強みとして打ち出している。メタップスクラウドと連携済みのSaaSは、2月初旬の時点で「Microsoft 365」など15製品に限られている。ただし、山崎社長は勝機はあると見ている。「3月の正式リリース時には30製品、今夏の機能追加時には数百のアプリケーションと事前連携できているという状況に持っていく」としている。日本市場のローカルな業務アプリなどにもスピーディーに対応していくことで、外資系ベンダーに対してアドバンテージを得たい考えだ。