NTTPCコミュニケーションズは、付加価値の高いアプリケーション領域やAI需要に応える商材拡充に力を入れる。腕輪型の脈拍センサーによって従業員のストレス状態を可視化したり、スポーツ・ヘルスケア業界向けに身体の動きをデータ化。また、AIの深層学習やデータ分析に役立つGPUサーバー商材を手厚くしている。既存の主力事業であるネットワークやデータセンター(DC)のサービスとは、「毛色の違う新しい領域にも果敢に進出する」と、今年6月に同社トップに就任した工藤潤一社長は経営方針を示す。
工藤潤一 社長
同社は1990年代にハウジングサービスを業界に先駆けてスタート。ホスティングやVPS(仮想専用サーバー)などのDCサービス、遠く離れた拠点やパブリッククラウドとの通信帯域を確保するSLA(品質保証)付きIP-VPNサービスをはじめとするネットワークサービスを強みとしてきた。だが、ホスティングやVPNサービスだけでは付加価値を高めにくく、価格競争にさらされやすいことから、ここ数年の売上高はほぼ横ばいで推移。成長路線への切り替えが経営課題になっている。
そこで、学習塾などを経営する明光ネットワークジャパンと腕輪型のセンサーデバイスを使い、健康経営を促進する“社員のストレスの見える化”の実証実験を始めたり、スポーツ・ヘルスケア業界向けに身体の動きをデータ化し、分析するAI活用サービス「AnyMotion」を始めるなど、これまでのネットワークやDC事業とは異なるアプリケーション領域のビジネスの拡大に努めている。また、AIやデータ分析に役立つGPUサーバー商材の拡充に取り組むなど、既存事業の延長線上ではない新領域への開拓を推し進める。
健康経営は業種に偏りなく幅広い需要が見込め、販売を担うビジネスパートナーの属性も、従来のネットワーク、DC領域では接点のなかった「新しい販路の開拓にもつながる」(工藤社長)と期待する。スポーツ・ヘルスケア業界向けのAnyMotionでも同業界に強いビジネスパートナーの獲得につながる可能性が高い。NTTPCコミュニケーションズはもともとビジネスパートナー経由で間接販売に力を入れてきた経緯があり、売り上げの約半分をパートナー経由が占める。パートナーとの関係づくりのノウハウもあるが、供給する商材がネットワークやDC関連だけでは、「新しいパートナーを開拓する機会も限られる」(同)とし、まずは商材の幅を広げていくことで新規販路の開拓につなげる。
既存のネットワーク関連事業についても、ソフトウェアで制御するSD-WAN技術を活用し、柔軟性や拡張性に優れたネットワークを構築するサービスや、ゼロトラスト・ネットワークの考え方を取り入れたセキュリティ商材を揃えるなど付加価値を重視していく。同社の昨年度(2021年3月期)単体売上高は445億円、営業利益率は9.2%、従業員一人当たりの売上高は約7580万円だったが、将来的に従業員一人当たり1億円、営業利益率10%を念頭にビジネスを伸ばす。(安藤章司)