さくらインターネットの子会社でMSP(マネージドサービスプロバイダー)事業を展開するアイティーエムは、新たにクラウドシステムマネジメントとセキュリティサービスを軸とした「Managed Cloud & Security Service Provider(MCSSP)」事業を開始した。河本剛志社長は「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に取り組む企業において、クラウドの運用やセキュリティが明確な課題となっているため、そこに特化したサービスを提供していく」と述べた。現在は、サービスラインアップの拡充に注力しており、3月以降に本格的に事業展開していく予定だ。
河本剛志 社長
アイティーエムは、20年以上MSP事業を展開しており、オンプレミスからクラウドまで、顧客企業が持つさまざまなシステムの運用監視、障害対応を24時間365日体制で支援してきた。現在までに、約800社5000ノード以上の運用実績を有しているという。
これまでもクラウド環境の運用やセキュリティ診断といったサービスを提供してきたが、新規事業として展開する。河本社長は、「当社がクラウドとセキュリティに特化したサービスの提供を強化していくことを明確にすることが狙いだ。当社には多種多様なシステムを長年、運用してきたことで高い技術力と障害対応などのノウハウが備わっている。MCSSP事業でもその強みを生かしていく」と説明する。なお、MCSSPは同社による造語だとしている。
MCSSP事業は、「クラウド環境に関する設計、構築、監視運用対応」「Webアプリケーション、サービスに関するパフォーマンス管理」「ITガバナンスやコンプライアンスに関する企業の目標達成のためのセキュリティ対策支援」「関連するシステムのアセスメント、コンサルティング対応」で展開する。
現在は、セキュリティサービスの拡充を進めている。2021年10月にIaaSのセキュリティリスクを診断する「クラウドセキュリティ設定診断サービス」を開始したことを皮切りに、「システムプラットフォーム層脆弱性管理サービス(外部スキャン)」「WEBアプリケーション層脆弱性管理サービス」「WEBアプリケーションファイアウォール運用サービス」をラインアップに追加した。
当面は「OSS脆弱性診断サービス」や「システムプラットフォーム脆弱性診断サービス(内部スキャン)」、「アプリケーション/ネットワークパフォーマンスモニタリングサービス」を3月までにリリースする予定だ。「クラウド環境では自社のセキュリティポリシーが適応できないケースも少なくない。当社のサービスを利用することでポリシーに近いセキュリティ環境を構築できる」(河本社長)。
クラウドシステムマネジメントでは、親会社のさくらインターネットの「さくらのクラウド」に加えて「Amazon Web Services(AWS)」と「Microsoft Azure」の導入から運用監視までをワンストップで提供できるようになったとしている。
クラウドセキュリティ設定診断サービスをリリースした直後から、既存顧客への案内を中心に販促活動を行っている。「まずは当社がMCSSP事業を開始したことを認知してもらうことが重要だと考えている。サービス拡充が完了し全体像が固まる3月以降に本格的な営業活動を推進していく」(河本社長)予定だ。
また、「さくらインターネットを中心に各グループ企業と連携した取り組みを行えるよう協議を重ねている」とした。
河本社長は「MCSSP事業を拡大させることで、当社が従来から得意としていたオンプレミス環境に加えて、クラウド環境、ハイブリッド環境のすべてに対応することが可能になるため、顧客に本当に必要なシステム構築から運用監視まで提案できる」と強調する。「顧客企業が目指すDXの実現に向けたアドバイスやコンサルティングも提供するなどして支援していく」と抱負を述べた。
23年にはMCSSPで得たデータや市場データなどを組み合わせ分析、そのデータを活用し顧客企業のビジネスサポートを行う「インテリジェントサービス」を提供していきたい考えだ。(岩田晃久)