ITコーディネータ資格制度は、2001年に通商産業省(現経済産業省)による国家プロジェクトの一環として設けられ、現在、6600人のITコーディネータが全国で活躍している。資格制度発足当初は、独立系のITコーディネータが半数程度だったが、最近では、企業内に所属するITコーディネータが74.2%、そのうちITベンダー系が55.5%となっている。資格制度の発足から20年以上が経過し、初期に資格を取得したITコーディネータは定年間近や定年を迎える頃となっており、また昨今のコロナ禍もあり、企業に所属しながら副業を行うケースも多くなっている。そこで、この連載では少子高齢化が進み、人生100年時代に対応していくために定年を見据えたITコーディネータによる活動のポイントについて解説していきたい。
ITコーディネータ制度の概要
今回は、定年後の生活状況や働き方など、高齢者を取り巻く日本の制度や状況について整理する。
ある海外の研究では、07年に日本で生まれた子供の半数が107歳よりも長く生きると推計されている。日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えており、人生100年時代に高齢者から若者まで、全ての人に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくることが重要な課題となっている。
人生100年時代構想会議の「人づくり革命 基本構想」では、幼児教育無償化、高等教育無償化、大学改革、リカレント教育、高齢者雇用の促進について検討が行われ、65歳以上の継続雇用年齢の引き上げに向けた環境整備や高齢者の雇用促進策が検討された。
昨年4月1日からは改正高年齢者雇用安定法が施行され、事業主に65歳までの雇用確保義務に加え、70歳までの定年引き上げなどの措置を講じる努力義務が課された。今年4月1日から年金制度改正法が施行され、年金受給開始時期の選択肢の拡大(現在60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を60歳から75歳の間に拡大)や在職中の年金受給金額の引き上げ(支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を現行の28万円から47万円に引き上げる)が行われるなど、高齢者の雇用や年金の対策が施されている。
人生100年時代の定年後を見据えた対策が行われてきてはいるものの、一方で話題となった金融庁の報告書「95歳まで生きるには夫婦で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になる」という定年後の資産形成・管理の問題がある。
年齢階級別の所得は50代が最も高く、高齢者世帯の所得はその他の世帯平均と比べて約5割となっており、現役世代よりも支出が少なくなっているとはいえ、公的年金だけで生活することはなかなか困難だといえる。
世帯主の年齢階級別にみた1世帯当たり-世帯人員1人当たり平均所得金額
昨年4月1日から施行された改正高年齢者雇用安定法では、(1)70歳までの定年引き上げ、(2)定年制の廃止、(3)70歳までの継続雇用制度の導入、(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、(5)70歳まで継続的に事業に従事できる制度の導入(事業主が自ら実施する社会貢献事業/事業主が委託、出資する団体が行う社会貢献事業)など、事業主がいずれかの措置を講じることに努め、どの選択肢を選ぶか労使間で協議し、それぞれの高年齢者の希望を尊重するよう定められている。
次回以降、このように整備されてきた働き方のどれを選択するか、ITコーディネータ制度をどのように活用していくか、具体的に検証していく。
■執筆者プロフィール

菅沼俊広(スガヌマ トシヒロ)
菅沼俊広税理士事務所 税理士 ITコーディネータ
青山学院大学経済学部経済学科博士前期課程修了。税理士法人あすなろを設立したほか、東京税理士会でさまざまな相談員を経験。直近では、日本税理士会連合会コロナ対策相談室委員を務める。大学院で講師として講義したほか、ITコーディネータインストラクターとしてセミナーも数多く実施。