クラウドベースのカスタマーサービスソフトウェアスイートを提供する米ゼンデスクは、「対話型CRM」と位置付ける新ソリューションを投入した。外部チャットアプリの対話自動化、顧客属性や対話の内容に応じて適切なチャネル・人員を配置できるルーティング機能などを用意。カスタマーサービスのコミュニケーションにおける「対話」をさらに発展させ、パーソナライズされた体験の提供を実現する。「消費者の高い期待に応えるためのソリューションだ」と話す同社のエイドリアン・マクダーモットCTOに、対話型CRMの意義やソリューションの狙いを聞いた。
エイドリアン・マクダーモット CTO
新ソリューションは5月に開催された同社のカンファレンスで発表された。主な機能には(1)高機能botによる対話の自動化(2)オムニチャネルルーティング(3)対話型データオーケストレーション──の三つがある。いずれも既存のソフトウェアスイートの機能を拡張する形で利用できる。
(1)では「Facebook Mess enger」や「WhatsApp」など、外部のメッセージアプリの自動化を実現する。顧客の質問や要望などの内容、意図をAIが判別し、自動で会話を生成する。botはユーザー企業が内製できる。(2)については、顧客の属性や状況、要望に応じて適切なチャネルやエージェントへ自動的に誘導する。パフォーマンスも常時監視し、人員配置の改善などに役立てられる。(3)はゼンデスクのプロダクト内または、連携する多様な外部ソリューションに蓄積されたデータを活用する仕組みで、よりパーソナライズされたサービスの提供を図ることができる。
対話型CRMが求められる要因として、マクダーモットCTOは「顧客は主導権を握りたがっている」と指摘する。従来のカスタマーサポートの窓口はチャネルや受付時間が限られ、やり取りは企業側が定めたスクリプトに沿って進められることが多い。問い合わせの中身によっては別のチャネルに誘導され、解決までに時間を要するなど、企業側の都合でストレスを感じるケースも少なくない。
質の悪い体験は別企業への乗り換えを促すきっかけになるため、対話型CRMの導入によって、顧客の状況に合ったチャネルで利便性の高いサービスをリアルタイムに享受できる環境を整備することは、顧客のエンゲージメントを維持する上でも欠かせない。
マクダーモットCTOは「セルフサービスで回答が見つかる会社を使いたいという顧客は多く、そのようなサービスを提供できることは、企業のCX(顧客体験)を高めることになる。私たちはそのための支援をしていく」と力を込め、今後もカスタマーサポートの効率化、顧客体験の充実に向けた開発に取り組むとした。
(藤岡 堯)