スタグネーションとインフレーションを組み合わせた造語「スタグフレーション」。不況とインフレの同時進行を表す言葉だ。過去の日本で振り返ると、1970年代のオイルショック後の状態だ。コロナ禍で起きたモノや労働力の不足で供給制約されていることと、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて資源価格が高騰し物価上昇を招いている状態の中で、決して好景気とはいえない今の日本経済に、追い打ちをかけるようにやってきている電子帳簿保存法への対応やインボイス制度への対応、そして賃金引き上げの波にはどのように立ち向うべきだろうか。真剣に向き合わなければならない。
理想を持つところから始まる中小企業・小規模事業者のDX
政府や従業員からは「生産性を上げよう、従業員の給与を上げよう」といわれ、中小企業・小規模事業者にとっては面倒なことを増やさずに会社の業績を上げ、従業員の給与も上げるのが目指すべき未来であろう。
では、何から始めれば良いのか。ポイントは、「何に我慢をしているか?」「何に時間を使っているか?」「1人でやるにはどうしたらいいのか?」を自問自答しながら周りの意見を中小企業・小規模事業者の経営者・経営幹部が聞いて回ることを勧める。理想のゴールが見えていなければ到底たどり着くこともできないし、イメージができていないとその場しのぎの対応で終始してしまうからである。理想のイメージをしっかりと想像することで、やりきる意志と決意を持って行動してもらう必要がある。
しかし、ITを利用したDXの知識がない中小企業・小規模事業者に理想像を丸投げしていては、理想すらも出てこないかもしれない。そのための支援としてITベンダーの存在がますます大きくなるであろう。
ITベンダーは存在価値を上げ、ボトルネックを解消できるか?
ITベンダーは、中小企業・小規模事業者が抱えるボトルネックは何か、日本の製造業が誇る改善手法を学び、どのような解決方法があるか、を自社の取り扱い製品の枠に囚われることなく模索し、中小企業・小規模事業者が抱えるボトルネックを「見える化」して横展開できれば、そのノウハウを他の異業種でも活用できるようになるであろう。
時代は着実にデジタル化の階段を上っており、例えば誰もが当たり前にAIを使う日がくることが想定できる。AI革命が起こる前の前哨戦である現在、「明治維新」ならぬ「令和維新」が起きていると時流を捉えるべきだ。電子帳簿保存法への対応やインボイス制度への対応に終始するだけではなく、ITを通じて自社の企業体質も変革し、中小企業・小規模事業者のDXを手助けあるべき姿を提案し、日本のデジタル化を共に目指していくことが求められていると認識すべきである。
■執筆者プロフィール

川崎 洋(カワサキ ヒロシ)
ベストプランナー 代表社員 ITコーディネータ
1997年から通信業界に携わり、営業、管理職、経営管理業務で海外出向とジャスダック上場の経験を経て10年に起業。16年に業界初の着信課金システムでビジネスモデル特許を認定。自社で導入していたテレワーク実践が厚生労働大臣から認められ、コロナ渦中に「特別奨励賞」を授与。中小企業のIT参謀として、ITのツールや通信機器を提供。