DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが叫ばれるようになったが、中小企業・小規模事業者においては、取り組みがまだまだ遅れているのが現状であろう。ではなぜ、中小企業・小規模事業者がそのような状況になっているのか。その実態に迫る。
Webアプリケーション・サービスを開発・運営しているシステム会社のリトルソフトが従業員300人以下の企業経営者を対象とした2021年2月に実施した実態調査によれば、DXに取り組んでいない企業が7割を超える。
DXへの取り組み状況
(出典:リトルソフト「DXへの取り組み」に関する調査)
また、販売促進などの売り上げに直結するIT化に期待しているものの、「自社を改革しよう」というまでには至っていないとのこと。DXをIT化の延長と考えており、「自社変革」にまでは至っていないのが現状だ。
デジタル化によって変革を期待している分野と利用・参入の検討状況
(出典:リトルソフト「DXへの取り組み」に関する調査)
仮に従業員から経営改善につながる提案があったとしても、決裁者の判断で実行されなければ何も変わらない。DXを阻む最大の課題は、「経営者の意識改革」といえる。
デジタル化によって変革を期待している分野と利用・参入の検討状況
(出典:リトルソフト「DXへの取り組み」に関する調査)
コロナ禍によって、営業停止や営業時間短縮を余儀なくされてきた事業者が多かったが、その期間中にどのように立ち向かったかによってもDXやデジタル化に対する考え方で取り組む姿勢が大きく変わる。ウィズコロナ時代に突入しつつあり、コロナ前までのやり方に戻る選択肢もあるが、現在、ロシアによるウクライナ侵攻に伴ってコロナの問題に加えて物価の上昇に耐えられる体制づくりも急務となっている。つまり、新しい時代に変わったといえる。中小企業・小規模事業者の経営者による意識改革を促し、勝ち抜くためにDXと向き合ってもらう時代に突入したと捉えるべきであろう。
経営者の意識改革を促すインセンティブといえば、補助金や助成金がある。補助金や助成金の活用においては、求められている要件の理解と最適なITツールを選定する必要が出てくることから、ITベンダーにとってはチャンスといえる。また、経済産業省が打ち出す事業計画案に商工会・商工会議所などと連携し、中小企業・小規模事業者に対して伴奏型の支援が計画されている。DX推進という点においては、ITベンダーとの密な連携にも注目が集まるといえそうだ。
■執筆者プロフィール

川崎 洋(カワサキ ヒロシ)
ベストプランナー 代表社員 ITコーディネータ
1997年から通信業界に携わり、営業、管理職、経営管理業務で海外出向とジャスダック上場の経験を経て10年に起業。16年に業界初の着信課金システムでビジネスモデル特許を認定。自社で導入していたテレワーク実践が厚生労働大臣から認められ、コロナ渦中に「特別奨励賞」を授与。中小企業のIT参謀として、ITのツールや通信機器を提供。