ピー・シー・エー(PCA)は、HR領域の事業に力を入れている。核となるのは、ストレスチェックサービスを提供する子会社のドリームホップだ。労働環境や法制度の変化によってHR領域に対する企業の注目が高まる中、同社は顧客基盤を順調に拡大しており、さらなる成長を見込む。PCAとしては、グループの力を結集して新しいビジネスの柱に育てる考えだ。
ドリームホップは、2020年にPCAの子会社となった。大企業や官公庁を対象に、ストレスチェックサービス「ORIZIN」(昨年4月にALARTから名称変更)や、ハラスメント対策を追加した「ORIZIN+」などを提供している。
(左から)ドリームホップの岡座守取締役と関口渓人氏
ストレスチェックサービスは、競合他社も同じようなサービスを展開している。ドリームホップの岡座守・取締役は「他社のサービスと比べた場合、紙とオンラインの両方で受検可能で、いずれも多言語に対応していることは差別化要素になっている」と説明する。さらに「技術の提供だけにとどまらず、保健師や臨床心理士などの有資格者による人的な支援ができる点も特徴だ」と話す。
同社は現在、200の自治体と300の民間企業を顧客に抱える。従業員が500人を超える組織の場合、カウンセリングやコンサルティングのニーズが出てくることが多いため、直販で対応。500人より少ない組織については、主にPCAの販路経由で導入を進めている。ストレスチェックの受検者数は、延べ160万人を超えており、PCAグループに入った時の80万人から倍増。PCA製品の新規顧客の獲得にもつながっているという。
ORIZINは、PCAの給与ソフトとAPIで連携できる。グループでは、勤怠管理ソリューションを提供するクロノスを含めて、各製品のデータを企業全体や部門別に一元管理できる仕組みの開発も検討している。これが実現すると、人的資本に関する情報開示のガイドライン「ISO30414」の取得に向けた企業の対応をより後押しできるようになるという。
国内では数年前から、生産性の向上などを目的に、各企業が働き方改革に関する取り組みを進めている。関連の法改正もあり、15年12月以降、従業員50人以上の事業所を対象に、年1回のストレスチェックが義務化された。今年4月には、パワハラ防止法について、これまでの大企業に加え、中小企業も対応することが義務となった。
こうした変化の流れを受け、岡座取締役は「カウンセリングを受けることをはじめ、ストレスチェックなどのメンタルヘルスに対しては、国内ではまだポジティブではない状況があるものの、どこかのタイミングで関心が高まり、欧米のように当たり前になっていくだろう」とし、「関連の市場は確実に伸びるはずだ」と期待している。
臨床心理士と公認心理師の資格を持つドリームホップのHRtech事業本部運用支援グループの関口渓人氏は「データ分析などを通じて、引き続き外から従業員や組織を守るためのお手伝いをしていく」と語る。
(齋藤秀平)