キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は7月1日、需要予測・需給計画システム「FOREMAST(フォーマスト)」の新バージョンを発売した。天候不順や災害、疫病、SNSでの注目度の急上昇といったコーザルデータを用いて予測の精度を高める新機能を実装したことが主な特徴で、今井太一・数理技術部部長は「一過性や突発的な要因に影響されにくい未来予測が可能になった」と話す。
コーザルデータを活用した需要予測は、流通・小売業ユーザーの間で活発だ。これに対し、FOREMASTのユーザー層の約7割を占める製造業ユーザーは、サプライチェーンの上流に位置し、製造から販売までのリードタイムが比較的長いことから「日々のコーザルデータの活用は流通・小売業ほど進んでいない」(今井部長)状態だった。
今井太一
部長
しかし、ここ数年のサプライチェーンの乱れは、コロナ禍や天候不順などの外部要因の影響が大きく、FOREMASTのユーザーからは「外部から受けた影響を取り除いた値を割り出したい」との要望が増加。こうした状況を受け、キヤノンITSは、コーザルデータが予測に与える影響度合をAIモデルで学習し、実績値や予測結果を補正することで予測精度を高める新機能を開発した。
例えば、コロナ禍の影響を除いた上で予測を出し、未来の感染状況や国の施策見通しを付加するといった使い方を想定する。過去のコーザルデータの部分を削り取り、平常値ベースの未来予測を実行した後、改めて未来に予想されるコーザルデータを付加する手順を踏むことで、「予測結果がどうしてこうなったのか説明しやすくなる」(今井部長)とのメリットも得られる。
FOREMASTの利用社数は、国内を中心に約70社となっている。サプライチェーンの乱れへの対応で、需要予測・需給計画システムへの引き合いは増えているといい、キヤノンITSは向こう3年で100社に増やすことを目指す。(安藤章司)