消費者は購買プロセスごとに具体的にどんなことに困っているのか、また、どんな体験を求めているのか。具体的な内容について、VoC分析の一種であるソーシャルリスニングを通じて確認していく。
ソーシャルリスニング(VoC分析)を通じた消費者ニーズの深堀り
Twitterの投稿をもとに、購買プロセスごとに「どのようなことを重視していたのか」「何に不満を感じたのか」といった点を、(1)各プロセスで連想される感情を初期キーワードに設定して投稿を抽出(「購入」プロセスでは「手続き スムーズ」など)、(2)投稿から推定した類似文言で補正をかけ再抽出、(3)投稿内容を体系的に分類、(4)投稿内容から要旨を抽出という4ステップで分析を行った。
VoC(Twitter分析)から分かる各購買プロセスに対する消費者ニーズ
「初期検討」プロセスにおける消費者ニーズ
「何に魅力を感じたのか」という点は、見た目と機能の二つがあり、前者で世界観や質感、後者で効能(例えば自身の条件に合った化粧品の系統と色味など)に関することが具体的に言及されている。「何に不満を感じたのか」では、一般的にどういうジャンルの商品なのか分からない、類似商品と何を基準に比較するのか分からないといった、「物品としての位置づけや特徴(例えば衣服や音楽のジャンル、ニッチな電子器具の利用用途など)の理解」に苦労した声が見受けられた。
「比較検討」プロセスにおける消費者ニーズ
「どのように比較、判断していたのか」では、定性面(見た目、使用感)が優先で定量面(スペック、金額)は足切り基準という傾向が垣間見えた。「何に不満を感じたのか」では、「商品が探しづらい」という声が多く、売り切れ商品が掲載され続けたままで見づらい、商品分類の仕方が荒すぎ(もしくは細かすぎ)て、アクションボタン(プルダウンなど)が探しづらいという声があった。
「購入」プロセスにおける消費者ニーズ
「何を重視していたのか」では決済手段の簡素化(ECサイトでの決済情報の入力省略など)といったスムーズさに関する投稿が多い。一方、「何に不満を感じたのか」ではショッピングカートに入れたのに接続不良で買えなかった、オンラインへ誘導されたが決済方法が限られており購入できなかったといった「購入時の阻害要因」に関する不満が散見された。
「評価」プロセスにおける消費者ニーズ
「商品のどこに不満を感じたのか」では商品説明の不備(状態の良し悪しなど)が言及されていた。また「サポートのどこに不満を感じたのか」では、AIアシスタント(チャットボットなど)に関して、解決するケースがあまり少ない、経由しないと有人対応(チャット、コールセンター)にならず困るといった「サポートサイトの導線設計」に対する声が挙がっていた。
VoCを軸とした顧客体験の改善
これらのソーシャルリスニングは、あくまで簡易的ではあるが、それでもこれだけ具体的な改善要望が抽出できる。実際には自社のコールログなどといった実ユーザーの声も母数に加えた上で分析し、改善対象の購買プロセスにおける改善仮説を磨き上げていくという作業が必要となるため、非常に根気のいる作業になるが効果は絶大だ。
昨今、テキストマイニングツールの導入が進んでいるが「商品Aには『使いにくい』というキーワードが多いことは分かった。では、何をどう具体的に改善すればいいのか?」という「so what」感に苛まれているケースも少なくないだろう。VoC分析には非常に高いポテンシャルがある。そのため「顧客の声を踏まえた顧客体験の高度化」を実現するためには、「もう一歩踏み込んだ泥臭いVoC分析」の検討を勧める。
■執筆者プロフィール

岩澤信一郎(イワサワ シンイチロウ)
NTTデータ経営研究所
ビジネスストラテジーコンサルティングユニットマネージャー
通信業や小売業を中心にBtoC商材における、セールス・マーケティング・カスタマーサポートなどの顧客接点におけるデジタルトランスフォーメーション、新規事業立案、消費者インサイト分析に従事。