SNSは成り立ちからいって、もともと文字のコミュニケーションが中心だった。140文字で「今」を表現するTwitterや、もともと文字を書き込むFacebookなど、PC時代に個人発信の主流だった「ブログ」のイメージを持ったままスマートフォンでの利用が増えていった。そのため、Twitterなどは「ミニブログ」と呼ばれていた時代もあった。
文字が中心とはいえ、長文というわけではなく、制限のあるTwitterはもとより、文字数制限のないFacebookでも「さっと読める短文」が主流だ。この傾向は、画像を中心に投稿するInstagramをはじめ、その他のSNSでも画像を同時に投稿するようになり、顕著になってきた。一般に文字だけの文章より画像が入った方が、伝わりやすく記憶に残りやすいのではあるが、SNSの場合、投稿する方も文章を書くより画像を入れる方が楽なので、SNSはほぼその形式になったという歴史がある。
投稿する人はさらに簡単な方法として「動画」を好むようになってきた。動画を撮ることは静止画像よりも難しいと意識しているのならば、CMや長尺のYouTube動画などを想像しているかもしれない。シナリオを考えて、動きや光を計算し、それなりの機材を使って作る動画は、SNSの中でそもそも歓迎されない。カメラのみならずビデオカメラとしても高機能化したスマホで、クリアな画像で手ブレもせず動画が撮れる時代である。
最近の映画ではスマホを使った撮影ももう珍しくない。そんなスマホが手元にあり、簡単なスナップのように動画を撮る。これが今のSNS投稿の主流なのである。
それを爆発的に流行らせているのはTikTokである。音楽やダンスの方に目がいくが、TikTokの人気の元はAIによるレコメンド機能。ユーザーは一つひとつの動画をじっくり観ているわけではなく、どんどんフリックして次の動画に移っている。しかも、縦動画が原則で、スマホの縦画面に合わせているのでその画面をフルに使って観ることができる。
どんどん移り変わっていくのだから、一つの動画の長さは15秒。これが「15秒縦動画」が流行る理由で、各SNSはこの機能を実装してきている。Instagramは「リール」を入れ、フィード投稿はリールだけというアカウントも珍しくない。YouTubeはなかなか再生回数の伸びない通常投稿を時間かけてつくるより「ショート」で気軽の投稿をするようになってきた。ショートもリールも、アカウントを訪れて観るのではなく、それぞれ専用のタグに流れて来る動画を「眺める」「送る」わけである。
そして、SNSは導線の変化を起こしている。これまでのように、ハッシュタグなどで検索したアカウントを見たユーザーが、その中の投稿を見ているという流れより、受動的に流れてくる15秒の縦動画を観てアカウントに興味を持ったユーザーがそのアカウントのプロフィールを見てアクションをするという方向に変わってきているのである。企業がマーケティングでSNSを運用する場合、この「15秒動画」を投稿していくことが重要になってきている。
ただ、そのフォーマットは「縦サムネイル」の表示を可能にしたTwitterを含めて、同じものを活用することができ、最も撮影編集のしやすい「リール」で撮ったものをカメラロールに入れ、それを各SNSに投稿する方法でも可能である。できれば「CapCut」「Inshot」などのSNS投稿に向いた動画編集ソフトを使って投稿をすれば、さらに効果的である。
■執筆者プロフィール

積 高之(セキ タカユキ)
京都積事務所 代表 ITコーディネータ
広告・ブランディングの職務を経験後、コンサルタントとして独立。大手子供服SPA,酒販小売業チェーン、保険代理店などの顧問・コンサルタントを歴任。ITだけでなく小売業・広告業の実務経験を通じ、リアルビジネスのマーケティングをベースにしたコンサルティングのノウハウを持つ。関西学院大学専門職大学院 先端マネジメント研究科(後期博士課程)在学中。経営管理修士(MBA) 関西学院大学大学院経営戦略研究科卒。チーフSNSマネージャー、上級SNSエキスパート、上級ウェブ解析士などの資格も持つ。