ローコードを上手く活用することによって、アプリケーションの内製化が可能になり、作成されたアプリケーションにより生産性の向上が見込める。しかし、いざローコード/ノーコードに取り組むことが決まっても、無数に存在する製品群から適切な製品を見出すというのは、正直とても難しい。製品選定を誤ってしまうと製品の持つ実力が発揮しきれず、内製化の取り組み自体が破綻してしまうというパターンも起こりえる。そんな事態を防ぐため、今回は「ローコード/ノーコードの違い」「ツール選定時に検討すべき内容」に焦点を当て、解説していく。
まずは、ローコード/ノーコードの違いについて説明する。
ローコード/ノーコードの違い
上の表でも分かるように、対象となる開発者のレベルや実現可能な範囲について、ローコードとノーコードではかなりの差がある。そのため、要件によってどちらを使用するべきかということがある程度固まることも少なくない。
例えば、「開発経験のない部門がメイン開発担当となり、データ管理アプリケーションを作成する」という場合は、アプリケーションに求められる複雑性にもよるが、無理に専門性とカスタマイズ性の高いローコードでは学習コストが高くリリースまでに多くの時間を要することが予想されるため、ノーコードで直感的な開発を行うことが推奨される。
逆に、「既存の業務基幹システムを情報システム部主導でリプレースする」場合、求められる処理の複雑性や、アプリケーションで実現させる業務が各社や各部署の特性に沿ったものであることが多いという点から、ローコードでなければ実現できないということが少なくないだろう。
また、ローコードの中でも使用難易度はかなり差がある。ある程度のコーディングやデータベースに関する知識があれば可能なものから、実務経験やアルゴリズムに関する知識がなければ、なかなか手を出せず十分に使いこなせるようになるまで、ある程度の学習期間を設ける必要があるものまでさまざまだ。
もちろん、情報システム部などの開発経験のある人材であれば、難易度の高いローコードを使用し複雑な要件を実現することが可能だ。だが、同じ難易度のローコードであってもこれまでにコーディング経験のない人材が取り組む場合、かなりの学習コストを要することになる。そのため、単純に「ローコードでいこう!」というのではなく、慎重に検討することが重要だ。
次に、ローコード開発を始める上でまず初めに検討・決定すべき事項について解説する。
検討項目は多岐にわたるが、特に製品選定において重要な項目を明確にすることで、実運用に適さないような誤ったツール選定の可能性を下げ、自社のビジネスや実運用に適したツールを選定することができる。結果として、ローコードの製品価値も最大化され、社内に成功体験が生まれる。これにより、DXや内製化に向けた動きが加速していくという好循環を発生させることも可能だ。
加えて、最も重要な点は「実現したいビジネス目標」である。DXにおいてローコードはあくまで「ツール」であり、「目標」ではない。では何が目標かといえば、「ビジネス価値の最大化」や「競合優位性の確保」になる。このような目標を達成するため、ローコードといったIT技術を活用して内製化などを実現していくことが必要になる。
具体的な目標を立て、それを実現するために必要なIT施策を検討することこそがローコードツール選定のスタート地点となり、DXの最初の一歩にもつながる。この点を忘れないでほしい。
■執筆者プロフィール

佐藤梨花(サトウ リファ)
SB C&S ICT事業本部ICT事業戦略・技術本部技術統括部
テクニカルマーケティングセンタービジネス開発課
神奈川県出身。大学ではリベラルアーツ学群に所属し、情報科学を専攻。卒業後は新卒で入社した会社にて8年半、主に基幹系Webアプリケーション開発(言語はjava)に従事。メインは設計~コーディングだが、運用・保守も担当。2021年からはSB C&S(現)にて、開発での経験を活かしDXやDevOps、クラウドネイティブなど、アプリケーション開発に関わるツールのプリセールスを担当。