コンピュータ業界は、構造不況産業になる――。高価な汎用機から安価なオープン機に主役が移り、オープンソース方式で、ソフトの価格も劇的に下がる。日本医師会からレセコンソフトの開発依頼を受けた。全国の医療機関に配布するソフトで、通常どおりのライセンス販売をすれば大きなビジネスになる。だが、これをオープンソースで開発した。開発費は得られたが、それ以降は無償で配布する。「オープンソース化すれば、ソフトの価格は劇的に下がる。ソフト産業を破壊するとの指摘を受けるが、価格破壊の流れはすでに始まっている。これが嫌な人は、280円の牛丼や59円のハンバーガーは食べてはいけない」
「メーカーが屁理屈をこねても、それは川上の論理でしかない。時代の流れの先端は、常に川下(=ユーザー)にある。先端を行くには、みずから川下に身を置くのがいちばん早い。いずれ欺瞞が顕わになり、コンピュータ業界は自己の水膨れ体質に気づく。人や経費が減らせないからといって、高い価格のまま売ろうとすれば、構造的な不況に陥る」「人は、立って半畳、寝て一畳の器でしかない。必要以上に高いコンピュータに回すカネがあったら、もっとほかに使い道がある。建設業界の次はコンピュータ業界だと言われないよう、今年1年を真摯に振り返り、来年の身の振り方を考えよう」と警鐘を鳴らす。
プロフィール
生越 昌己
(おごし まさみ)1963年、島根県生まれ。83年、松江工業高等専門学校電気工学科卒業。放送システムなどの開発を経て、97年、ネットワーク応用通信研究所入社。99-01年、日本リナックス協会会長。01年、現職。著書は、『Linuxカーネル設定ガイド』(翔泳社)、『Linuxを256倍使うための本』(アスキー)など。