CGで美しく描かれた絵画――。高度化する描写技術は驚きの連続である。このCGを描くソフトを、誰もが手の届く価格で世に出し続けるのが時枝氏を中心としたShade(シェード)開発陣である。米カリフォルニア州郊外の自宅で、早朝から次期バージョンの開発に没頭する。
わずか3日間の帰国の機会にインタビューした。「ぼくにとって、3日は年間開発日数の1%にもなる貴重な時間。仮にあと半年以内で次期バージョンの開発を終えるとすれば2%にも相当する」「よく、人から『Shadeの開発をライフワークにしている』と言われるが、違う。Shadeは、ぼくのライフそのものだ。弟子も取らないし、ビジネス本位の助言にも従わない」
「お世辞かもしれないが、『あんたのつくったShadeのおかげで、オレはメシを食えている』と、CGクリエーターから言われる。うれしい。でも、基本は、自分が使いやすく、誰もが思い通りのことができるShadeをつくるだけ」次期バージョンの改善項目は軽く100か所を超える。
「世界中のプログラマーに仕事を依頼することもあるが、外注に出すという感覚はまったくない。あくまでも開発パートナー。やる気のある人が近くにいればいい」手作業の職人技で、世界市場に打って出る。
プロフィール
(ときえだ としや)1959年、福岡県生まれ。82年、九州芸術工科大学卒業。84年、同大修士課程卒業。CG(コンピュータグラフィックス)を使ったCADなどを研究する。同年、システムソフト入社。87年渡米。03年、イーフロンティア入社。89年、時枝氏が中心となり開発したCG制作ソフト「Shade」第1版完成。Shadeは、その後、イマジン、エクス・ツールスなどを経て、今年4月からイーフロンティアが販売を担当。