グッドデザイン賞、AMDアワード、文化庁メディア芸術祭など、さまざまな受賞歴は、開発してきたデジタルイメージング関連のソフトウェアの新規性や創造性が高く評価されたからである。その背景にはデジタルステージ独自のソフト開発手法が隠されている。通常、ソフト開発は、綿密なマーケティングに基づいた完成度の高い仕様書を作成し、実際の開発はコストとの兼ね合いから協力会社や海外へ発注することが多い。こうした手法が生産性が高いからだ。だが、デジタルステージは違う。平野さん自身がプロデューサーとなり、映画や演劇の制作と似た手法を採る。
「作品テーマに合う最高のクリエイターをその都度集めて、集中的に制作する。途中で気に入らなければ、まるで脚本を書き換えるようにソフトの仕様書を抜本から見直すことさえある」クリエイターには“自分が主語でないことは言わないルール”を徹底させる。「こんな機能って普通あるべきじゃないの」という一般論は御法度だ。「わたしはこの機能が欲しい」、「なぜ?」という議論を何か月も続け、独創的なソフトづくりにこだわる。「途中でピンと来なければひっくり返して作り直す」。
通常のソフト開発では考えられない手法だ。「コストはかかる。生産ラインも1本だけ。しかしユーザーの期待は裏切れない」常に最高傑作を目指すプロデューサーであり続ける。
プロフィール
平野 友康
(ひらの ともやす)1974年、群馬県生まれ。95年、和光大学中退。同年、劇団のサードステージに所属し、アーティストとしての活動を本格化する。97年4─9月、ニッポン放送「平野友康のオールナイトニッポン」(金曜第1部)、98年4月─99年3月、ニッポン放送「平野友康のオールナイトニッポン」(土曜第2部)など多数のラジオ・テレビ番組に出演。98年、ソフト開発のデジタルステージを設立、社長に就任。開発したパッケージソフトは、グッドデザイン金賞を受賞。