1990年代後半、インターネットのリスクが顕在化してきたころ、ニューヨークでの勤務に就いた。米国でネットビジネスが台頭し、最先端のサービスとそのリスクを目の当たりにしてセキュリティに関する新たな分野の保険に携わり、「必ず日本でも直面すると確信した」という。それから、日本のネット社会に貢献できるチャンスを探り、ITとネットのリスク回避の方策を練るのに没頭した。
今年4月に完全施行される個人情報保護法が成立した03年5月以降、人々のセキュリティに対する不安はそれまでとは明らかに変化したという。しかもその不安は漠然としており、「何がリスクなのかわからない」のだという。昨年2月に「個人情報漏洩保険」を商品化したが、単純に保険に入れば安心ということではない。「なぜ危機管理が重要なのか、という啓蒙活動が必要だ」と力を込める。
ISMSやPマークの取得によるリスクマネジメントをすることで、事故を限りなくゼロに近づけることはできる。しかし、機密情報を扱うのは人間。「ミスが全く起きないとは言い切れない」と、物理的な強化を講じても、結果として事故をゼロにすることはできない危険性をはらんでいる。
「顧客はビジネスのプロであっても事故対応のプロではない。当事者になって初めて経験する」。防止するとともに、「事故に向き合わなければならない」、それが現実だ。「事故を危機に変えない」ための新たなソリューションを提供する。
プロフィール
中江 透水
(なかえ とうすい)1967年生まれ、愛知県名古屋市出身。94年、米国ケンタッキー大学を卒業後、AIU保険会社に入社。99年10月、米国AIG本社へ出向し、日本向けIT関連保険の開発に従事。01年10月に帰国し、ITおよび情報関連分野を中心とした経営保険の開発・引受を担当。現在に至る。マイクロソフトの中小規模企業向けセミナー「IT実践塾」と協業して開催している個人情報漏えい対策無償セミナーで講師を務めるなど、企業向け講演を多く行っている。