「ISVを伸ばすためにIBM全体の力を使いたい」──これまでISV(独立系ソフトウェアベンダー)担当部門が主体になっていたISVのバックアップ体制を日本IBM全体に広げた。「これからはIBMもミドルウェアと一体でISV製品の拡販にコミットしていく」。ISVから寄せられた「組織が大きすぎ、動きが鈍い」という苦言に応え、持ち前の行動力で社内の風通しを変えた。
「私のDNAはISVに近い」。トッパン・ムーアシステムズ(現・トッパンエムアンドアイ)に在籍していた1990年、旧JDエドワーズのERP製品の独占販売権取得に奔走した。開発ツールのチャネル販売やマーケティングを手がけた経歴もある。ソフト販売は手慣れたものだ。だが、「もっと大きな組織で、大きなチームをまとめたい」と日本IBMに中途入社した。
日本IBMは今年度(06年12月期)から、全社体制でISV支援を開始。その陣頭指揮にあたった。「パートナーの目線で、マーケットを見たい」と、技術面に偏っていた支援策を改め、案件発掘までをISVと共同で企画・立案している。
「ソフト業界は、IT業界で最もドラスティックに変わる分野」と、これまでの日本IBMに見られない地道で、スピーディな展開を仕掛けている。
日本のソフト産業の「輸入超過」を懸念する1人。当面の夢は、「国産ソフトをIBMのプラットフォームに乗せ、海外進出を果たす」こと。海外ソフトの日本進出を手伝ったこれまでの手腕は、これから「輸出」で発揮される。
プロフィール
古長 由里子
(ふるなが ゆりこ)福岡県北九州市生まれ。87年、西南学院大学文学部国際文化学科卒業。同年、トッパン・ムーアシステムズ(現・トッパンエムアンドアイ)に入社し、製品デモやマーケティングなどを担当。94年、同社と合併して設立した開発ツール会社、サイノンの日本法人に出向し、1年後に転籍。96年7月、クライアント・サーバー向け開発ツール会社、パワーソフトの日本法人に入社。98年10月、日本IBMに入社。ソフトのマーケティングの部署を歴任し、04年1月から現事業部に配属され、06年1月から現職。