NECが自社開発したセキュリティソフトの二枚看板「CapsSuite(キャップスイート)」と「Infocage(インフォケイジ)」。森野淳一さんは、両製品の生みの親である。
NECは決してセキュリティソフトの先駆的な企業ではない。むしろ、出遅れた。ただ、後発の弱みを跳ね返し、CapsSuiteは検疫ツールとして昨年度トップシェアを獲得した。Infocageは、今年11月に新コンセプトと新たな製品体系で再スタートを切る。若きマーケティングプランナーが、NECのセキュリティソフトの一翼を担っている。
入社からまだ4年しか経っていない。だが、その中身は濃い。入社直後からフル回転だった。入社時は社内のセキュリティシステム構築を担当し、その後、このノウハウを持ってCapsSuiteを商品化した。当時流行したウイルス「MS Blaster」の影響で問い合わせが殺到。人手不足から自ら顧客先に常駐して、PC1万台をつなぐシステムに1か月ほどかけて導入作業を行った。
CapsSuiteが軌道に乗ったかと思えば、次はInfocageの立ち上げ。今秋には「協調型セキュリティ」という新コンセプトの立案と製品体系の刷新をプラン。今は2つの部門を兼務する。次から次へと湧いてくる仕事をこなし続けている。
大学時代は人工知能に興味を抱き、人とコンピュータの理想の関係を追求してきた。突き詰めた結果、セキュリティの必要性にたどりついたのが、今の仕事につながっている。
「世界で通用するソフトをつくって売りたい。その可能性が大きい会社を選んだ。国内トップシェアはもちろん通過点」
静かな語り口調とは裏腹に、胸に秘める野心は動的で大きい。
プロフィール
森野 淳一
(もりの じゅんいち)2003年、東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻修了。同年、NEC入社。入社直後は、NEC社内の情報セキュリティシステム「CAPS」構築を担当。その後、セキュリティソフトの企画に携わる。CAPSを商用化したパッケージソフト「CapsSuite」の立ち上げスタッフとして製品企画を担当した。企画・マーケティングだけでなく、ユーザー企業への導入・SI業務も行った。「CapsSuite」は、調査会社富士キメラ総研の「2006 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧」の「検疫ツール部門」で44.4%のトップシェアを獲得した。セキュリティソフト「Infocage」も立ち上げる。Infocageは今年11月、「協調型セキュリティ」という新コンセプトのもと新たなラインアップで営業展開を開始する。