「アウトローの道を歩んできた」──。高卒で航空自衛隊に入隊したあと、別世界へ転身したことを指して、自らをこう評する。IT企業の在籍歴では、大塚商会が最も長い。だが、「“大塚の看板”にあぐらをかいているのは、性に合わない。人と同じ生き方をしたくない」と、ソフトウェアのITベンチャーを立ち上げ、一国一城の主になった。
ITベンチャーといえば、一般的には、たらふく儲け、華やかな世界をたどる道と見られる。しかし、「野村さんに頼んでよかったと、中小企業経営者の方々から感謝されるのがいちばん嬉しい」と、儲けは二の次、人づき合いを大切にしながら身の丈にあった仕事をこなすことにこだわる。
高校では理数科が得意だった。「もともと興味があった」と、最初に入社したシステム開発会社、ジャパンシステムでは、NEC我孫子工場(千葉県)の生産管理をUNIXでシステム構築することなどに携わった。
大塚商会では、社長(当時)の特命で組織した「UNIX販促部隊」にSEとして所属。そこで、中小企業の社長との人づき合いが好きになり、いまでも依頼主の社長の人間的な魅力で仕事を請け負う。
リアルプロジェクトの主力製品は学校と出版業向けの業務管理ソフト。大塚時代に得たノウハウを生かして開発した。「教育市場は、大手ベンダーが幅をきかす閉鎖的な面がある。だけど、ニッチな市場だから、安価なソフトを売り込める余地がある」という。
キャッチフレーズは「本物の誠実なIT製品を提供する」。大手ベンダーの3分の1の価格だが、心のこもった確かなシステムを提供する。仕事の報酬は、発注者の笑顔ということなのだろう。
プロフィール
野村 健一
(のむら けんいち)1963年9月、東京都墨田区生まれ、43歳。82年、埼玉県立所沢東高校卒業。同年、航空自衛隊に入隊し、警戒管制業務に従事。83年に除隊したあと、システム開発会社、ジャパンシステムに入社し、汎用機を中心に生産管理システム構築に携わる。89年、大塚商会に入社。オフコンのSEで業務アプリケーション構築を担ったほか、社長特命の「UNIX販促部隊」に所属。01年、旧日商岩井系でITを利用して半導体の購買代行サービスをするチップワンストップに入社。03年8月、リアルプロジェクトを東京・文京区本郷で設立し、社長に就任した。